ダ・ヴィンチ流、最短で上達するための王道ルート

目次

天才ダ・ヴィンチの2つのポリシー

世界で最も有名な絵である『モナ・リザ』を描いた画家、レオナルド・ダ・ヴィンチ。当人亡き500年後も、世界中の人たちに注目される絵を生み出したというのは本人も想定していなかったことかもしれません。

そんなダ・ヴィンチは一体、どんなことを考えて絵を描いていたのでしょうか?
ダ・ヴィンチ思考をたどってみると、ポイントは大きく2つあります。

  1. 多様性

たとえば人物を描くときに、大切なことは多様性であるとダ・ヴィンチは言っています。

「人体というものは、均整がとれていたり、太って背が低かったり、痩せて背が高かったり、中肉中背のような場合もある。それなのに、このような多様性に留意しない画家は、人物像をいつも型通りに描くので、すべての人が兄弟のように見えてしまう。これは大きな非難に値する」

ウルビーノ稿本


なるべく違いを表現することを重要視しています。
もう1つ大切なことは、表面的な外見の正確さに加えて、目には見えない内面をいかに表現するかという点です。

  1. 心情表現

「人物像において心情を表現する動作は、心の動きに完全にマッチしているように描き、その動作に大きな愛着心と熱意が表れてなければならない。さもないと、その人物像は一度ならず二度死んでいる、と言われるから。つまり、その人物は絵空事であるから一度死んでおり、それが心の動きも体の動きも示してなければ、二度目の死を迎えることになる」

ウルビーノ稿本


たとえば傑作『最後の晩餐』は、裏切り者がいると知った弟子の驚きの感情が、豊富な身振り手振りで表現されています。

ダ・ヴィンチの絵が国と時代を越えて感銘を与え続けている要因は、見た目の外面を事細かく観察し、内面を鋭く汲み取った結果といえるでしょう。


ダ・ヴィンチは、物事をよく見ていました。実に鋭い観察眼です。観察をせずに自分の想像で描いてしまうと、多様性が失われ同じように見えてしまいます。そして、上達の妨げともなり思うように成長もできません。以前、私はダ・ヴィンチが天才と呼ばれる理由の1つは、観察魔であるからという記事を書きました。ご興味のある方はお読みください。

ダ・ヴィンチを万能の天才にした“3つの魔力”【観察魔編】
あわせて読みたい
レオナルド・ダ・ヴィンチたらしめる深い観察力について【万能の天才の“3つの魔力】 【ダ・ヴィンチにかかれば、宇宙からハエまで研究対象になった】 ルネサンスが生んだ偉大な巨匠、レオナルド・ダ・ヴィンチ。アートや科学、様々な学問にも精通していた...

① 優れた師匠から学ぶ

さて、観察眼を鍛えること以外にも、何かを習得し、上達するためには欠かせないことがあります。

まず、1つ目は、独学ではなく、実力ある先生からしっかり学ぶということです。
ダ・ヴィンチの場合は、父親に芸術の素養を認められて、14歳の頃に、花の都フィレンツェで1、2を争う工房に弟子入りしています。ヴェロッキオという腕利きの師匠から絵画の描き方はもちろん、彫刻や建築など工房に依頼がくるあらゆる仕事を学んでいます。そして、二十歳で親方の資格を得た後も、独立するまでヴェロッキオ工房で技芸を磨き続けました。

しっかりした先生の元で学ぶことは大切ですが、弟子入りしてすぐに大きな作品を任せてくれる訳ではありません。新入りの仕事は、顔料を砕くことだったそうです。現代のようなチューブに入った絵の具はなく、まずは色の調合作業が必要でした(なんと当時は羊の膀胱に入れて絵の具を保管していたといいます)。そのような下積みをして、絵を描く場合も基礎固めから始まります。建物を建てる際も、土台がしっかりしていないと倒壊してしまうように、物事の上達もしっかりとした基礎を作ることが大切です。

② 成長の度合いは基礎固めで決まる

レオナルド・ダ・ヴィンチ没後500年展(2019年10月24日〜2020年2月24日)がルーヴル美術館で開催された際、ダ・ヴィンチが一流の画家を目指してデッサンをした衣服の下絵が展示されていました。


人の体がそこにあるかのように思わせるリアルなしわの描写は、お見事という他ありません。このような服の習作は他にも何枚もあります。

ダ・ヴィンチは、徹底的にリアルに描く方法をノートに書き残しています。
その手順は以下の4つの流れです。

1 何度も同じ手本をまねて描き、脳裏に刻み込む
2 手本を見ずに、手本を再現させようと思って描く
3 ガラス板を使い、手本と自分の描いたものを重ね、不一致を検証する
4 不一致部分に注目し、そこだけ何度も描いて記憶する

正確に描くためには、このような地味なプロセスを丹念にこなすことが必要で、ダ・ヴィンチは真面目に実践をしていました。自分の描きたいものを描く前に、しっかりとした基礎固めをすることが先決であることを教えてくれています。

③ 広く学び作品に生かす

日本の伝統芸能でも、よく「守破離」という言葉で創造のプロセスが説明されます。

まず師匠から習って型を守り、自分なりに模索して修練を積み重ね、やがて型を破る段階に達します。そこから独自性を形作っていくことで、最終的に型から離れることができるようになります。ダ・ヴィンチも、このような3ステップをふまえ、多くの人を感動させる独自のアートを創造しました。

そして、この「離」である独自の表現をするためには、絵画以外のことを幅広く学び、その学びを絵画に生かすことが有効です。

ダ・ヴィンチの場合は、人体を正確に描くために解剖学を学び、自然描写も植物学や地質学、流体力学の知識を総動員して描いています。さらに、幾何学、遠近法、光と影の研究も存分に取り入れて優れた画面構成を実現しました。

その他、小説や格言集、童話なども読んでいました。

オリジナルの作品を生み出すためには、色々な知識と自分の経験を重ね合わせ、誰もしたことがない表現を紡ぎ出す努力が必要です。ぜひ、学んだことを知識で終わらせずに、人に与える感動に変えていきましょう。

大成したければ、然るべき手順を踏め!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2023年 1月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次