ダ・ヴィンチが発明した武器に学ぶ天才のアイディア

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ダ・ヴィンチは軍事技師だった

レオナルド・ダ・ヴィンチと聞くと、どんなイメージを思い浮かべるでしょうか?
きっと、『モナ・リザ』を描いた画家を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、画家という職業を超えて、一つの枠にとどまらない多才な活躍をしていました。

そのうちの1つが軍事技師という側面です。今から500年前、イタリアのルネサンス時代には、芸術家が集まる工房ではいろいろな仕事を請け負っていました。絵や彫刻を制作するだけではなく、建物や日用品に至るまで、あらゆる創作物に携わっていました。

隣国同士が争い合う戦乱の世の中でもありましたので、クリエイターに兵器の開発が求められたのです。ダ・ヴィンチは時代の要望に応えて創造的な武器の構想をたくさんノートに書き残しています。

今回の記事では、ダ・ヴィンチの発明した武器から、常識を超えるアイディアを学んでみたいと思います。

① 美しすぎる大砲のスケッチ

アトランティコ手稿には、ダ・ヴィンチが描いた美しい大砲のスケッチが描かれています。

2つの大砲が前後に並んでいることに注目してみましょう。


もし、自分が大砲の発明者であるならば、大砲は1つしか描かないかもしれません。しかし、ここでダ・ヴィンチがあえて2つの大砲を描いたことには特別な意味があります。

手前の大砲は、弾丸を発射した直後の様子。一方、後方の大砲は、発射してから着弾するまでの一連の流れを示しています。

そして、ダ・ヴィンチの弾丸は、一風変わっています。その詳細についてはスケッチと共にこのように補足されています。

「爆発する砲弾を発射する迫撃砲の研究。煙が立ち込める中、2基の大型砲撃機が、丸型や菱形などさまざまな大きさや形の弾丸を発射し、地面に落下すると爆発して小さな金属球を排出します」

通常の弾丸は威力が大きく、建物を破壊する上では役に立ちますが、敵の歩兵へのダメージとしては不向きでした。そこで、複数の弾丸をなめし皮で包み、着弾時に破裂して敵兵に被害を与えることを構想しました。

CGで再現したものがこちらの画像です。

出典:Il laboratorio di Leonardo da Vinci : alla scoperta dei misteri e delle invenzioni del genio universale / a cura di Massimiliano Lisa, Mario Taddei, Edoardo Zanon = Leonardo da Vinci’s workshop : discover the secrets and inventions of the universal genius / edited by Massimiliano Lisa, Mario Taddei, Edoardo Zanon


大きな包みとしての球の中に、火薬球が一杯入っており、さらにその中に金属球が入っているという三段構えの複雑な弾丸です。

「単に大きな弾丸が爆発して終わり、という単純なものではないんだよ」ということを伝えるために、わざわざ2つの大砲を描いていたということです。

ダ・ヴィンチは、弾丸について研究を重ね、アランデル手稿には、空気抵抗が少ない流線形の弾丸を構想しています。さらに、安定して真っ直ぐ飛ぶように「ひれ」をつけています。


別のウィンザー紙葉には、なんと槍型の弾丸です。尖った先端から中央に延びているひれをダ・ヴィンチは角(つの)と呼び、着弾時に発火する火薬が詰められています。


このように、創意工夫を積み重ねた発明こそが、ダ・ヴィンチ思考の具体化といえます。プラスαの機能を追加させることで、見違える進化を遂げるのです。

② 向けられると恐ろしすぎる機関砲

「機関砲」という名称を最初に名づけたのは、レオナルド・ダ・ヴィンチだと言われています。ダ・ヴィンチが構想した機関砲がこちらです。砲身がたくさん横並びで装備されており、上図のものは全部で33の小銃があり、そのうち11の小銃を同時に発射できる回転式の二輪車です。

中図のものは、10の小銃で同時に発射できる扇型の仕様です。たくさんの銃口があることで、鉄砲の効果を10倍にしています。発射角度を変化させるためのジャッキとハンドルもつけられています。


いずれも複数の銃口がありますが、このように1つでも3つでもない、10個以上と極端に数を増やすことで視覚的なインパクトが高まります。

私は以前、現代アートの展覧会に行った際に、ウルトラマンのフィギアがたくさん並べられたアート作品を見たことがあります。ウルトラマン1体だけであれば、それは単にウルトラマンに過ぎませんが、たくさんあることで“ウルトラマンを超えたアート作品”へと昇華する。作者はきっとそんなメッセージを発していたのかなと感じました。

皆さんも同じものを並べて、独自の世界観を作ってみてはいかがでしょうか。

③ あまりにも巨大すぎる弓

先ほどの機関砲が“数”だったのに対して、こちらの弓は“大きさ”です。
弓と聞くと、両腕を使って矢を飛ばす小さな武器をイメージします。しかし、ダ・ヴィンチが構想した弓は人間が小人に見えるほどの巨大なものでした。


まだ大砲の技術が確立していない場合は、大型の弓を作って投石することを考えました。実はこの投石用の弓は、計算されて設計されています。

石弓の弾力性を高めるために、薄板構造になっていたり、引き金の外した方も左側に2タイプ示されています。バネ留式のものでハンマーで叩いて引き金を外す方法のもの、もう一方は、レバー操作で引き金を外す方法です。

よく見ると、備え付けられた車輪はすベて内側に傾斜しています。これは、垂直よりも幅広にすることで道路運搬上の衝撃を吸収する役割を果たしています。

このような緻密な設計があってこそ、巨大な武器が機能します。

現代でいうならば、巨大なロケットを私は思い浮かべます。種子島からのH3ロケットの打ち上げが難航し、ようやく空に飛び立ったかと思いきや、エンジン着火が確認されず司令破壊となり打ち上げ失敗に終わったことがニュースでも報道されていました。

巨大なものは大変インパクトがありますが、同時に繊細さも兼ね備える必要があることを教えてくれます。

④ ユニークすぎる槍・斧・刀

ダ・ヴィンチは、刀や槍(やり)、斧のデザインもしていました。こちらがその一例ですが、非常に装飾的なところが特徴的です。


武器としての実用性よりも、デザイン性が感じられて見ているだけでワクワクしてきます。

現代社会はものが溢れる時代となり、ネットのボタン一つで何でも家に届きます。
そのような利便性の高い社会において、差別化できるポイントの1つがデザインです。

ダ・ヴィンチのように卓越したセンスがあり、また遊び心があるような商品が、今後ますます世に求められていくのではないでしょうか。

以上、ダ・ヴィンチが構想した武器をご紹介し、そこから学べることを共有させて頂きましたが、いかがだったでしょうか。既存のイメージに捉われないダ・ヴィンチの柔軟な発想に学び、今の自分に活かせることを見つけていきましょう。

洗練された感性をアレンジせよ!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2023年 5月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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