自分なりの意見が確立する“ダ・ヴィンチ思考”

目次

敵を常に意識して想定する

レオナルド・ダ・ヴィンチの考え方、「ダ・ヴィンチ思考」についてご紹介していきます。
ダ・ヴィンチ思考の定義は、

「常識を超えて、幸せな“空飛ぶカメレオン”になるためのトランス・シンキング」

であるとお伝えしています。

“空飛ぶカメレオン”とは何か、については、前回の記事でお伝えしました。

前回記事:ダ・ヴィンチ思考 〜調和しながら進化をする生き方〜

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今回は、ダ・ヴィンチの思考の癖としてみられるトランス・シンキングについて考察してみようと思います。

トランスとは、「超越する」「向こう側へ」を意味する接頭語。今日でも、“トランスジェンダー”や“トランスフォーメーション”などの英単語でも使われています。

ダ・ヴィンチのノートを読んでみると、自分の経験に基づくいろいろな考えが書いてありますが、常に自分とは主張が異なる敵を意識していたことが特徴的です。

たとえば、このような「論敵」という言葉を出して語る文章が多く見つかります。

「論敵は、それほどの科学は必要なく、自然物を模倣する訓練だけで充分だ、と言う。これに対しては、次のように答えられる。何はともあれ、われわれの判断力を信用すること以上に、われわれを欺くものはない、と。以上のことは、錬金術師や、降神術師や、その他の無能な人々の敵である経験が、常に証明してくれているからである」

出典:絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ

芸術家であり科学者だったダ・ヴィンチは、確かな経験に基づいた科学を論拠にし、また絵画の中にも数学、幾何学、遠近法などの科学を導入しました。

まず相手がどんな主張をしているのかを列挙し、それから自分の考えを述べています。自分とは異なる他人の意見があるからこそ、それを超越する自分なりの結論に到達するのです。

アメリカの教育で学んだこと

私は以前、アメリカ研究科の大学院で学んでいたことがあります。その中で、物事の見方を変えるような画期的な授業がありました。

どんな内容かというと、あらかじめ決まった1つのテーマについて、YESとNOの論文が用意されており、YESとNOの2つのグループに別れてディスカッションをするというものです。

たとえば、消費税増税がテーマだとします。すると、YESには、増税をしなくてはいけない理由がいろいろなデータを元に肯定的に書かれてあります。反対に、NOの論文には、増税するとこれだけ困る人が出てくるというような種々のデータが示されています。

自分が増税反対派だったとしましょう。ちょうどNO側でディスカッションをすることになればいいですが、実はそうとも限りません。

グループはランダムで振り分けられるため、YESで選ばれた場合はたとえ本心はNOだと思っていても、YES側で肯定的に意見を伝えなくてはいけません。

不本意ながらもYESの意見を調べて、自分の口で語っているうちに、段々となぜ肯定する人がいるのかがわかってきます。最終的にやっぱり自分もYESにしようと考えが変わったり、考えが変わらなかったとしても、英語で言うAgree to Disagreeという「合意はできないが、相手の考え方は分かるので、意見は一致しないことを認め合って進んでいこう」という柔軟な思考に変わっていきます。

YES・NOをハッキリ言わない日本人にとって、このような自分の意見を持つための訓練をすることは、きっともっと必要なことでしょう。

「自分の意見は正しいので、他人の意見には聞く耳を持たない」という頑なな姿勢よりも、相手の意見を理解した上で自分の意見を主張する方が、どんどん自分の思考レベルが上がっていきます。やがて、確固とした自分軸を築くことができるようになります。

他人の意見を検証し、自分の意見に立ち返る。これがトランス思考の特徴の1つです。

越境して1つに繋げる

さて、トランス思考にはもう1つ別の側面があります。ダ・ヴィンチは、芸術、科学、学問、あらゆることに打ち込んだ人物ですので、人の何倍も視野が広かったはずです。

いろいろな知識を吸収しつつ、学んだことを組み合わせて昇華させようとしていました。

たとえば、人体解剖をする際、このようなコメントを残しています。

「いくらあなたが情熱的に取り組みたくても、胃が吐き気をもよおすかもしれないね。そうならなかったとして、皮膚を剥がされた八つ裂きの死体と一晩過ごす恐怖を乗り越えなくてはならない。怖くなくても、図示するための描写力は別問題だ。デッサンの能力だけではダメで、遠近法の知識もいる。それがあったとしても、幾何学的な証明法や、筋肉の働きの強さの計算方法を知らないかもしれない。最後に、それを繰り返す忍耐力が必要。私が満足な研究を成し得たかは、研究ノートで判断してくれればいい。もし不完全だとすれば、それは怠慢のせいではなく、ただ時間が足りなかったのだと言い切れる」

出典 解剖手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチ


今から500年前、医療設備が整っていない時代に解剖をすることは、大変な腐敗臭の中での作業になります。相当な根気がなければできないことですが、気合いだけではダ・ヴィンチが描いた美しい人体図を描くことはできません。

そこには、絵を描く技術とセンス、遠近法や幾何学、筋肉の仕組みの理解など、重層的な知識と経験のベースが必要です。トランス思考とは、頭の中でまったく別分野を行き来しながら繋げ合わせるプロセスなのです。

越境する多分野を学んでそれを1つに結実させることができる人は、一歩上をいくことができます。

以前、このことに関して記事を書いていますので、よろしければ合わせてお読みください。

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1つのことを極めるのは当たり前

「人生のすべての時間を費やして、ある一つのことだけを学び、ある程度の完璧な域に達したとしても、確かにそれは大したことではない」

出典:絵画の書 レオナルド・ダ・ヴィンチ

万能の天才と言われたダ・ヴィンチからすると、1つの分野を突き詰めるスペシャリストは、それだけ時間をかけてやっているのだから当たり前。

人間には無限の可能性があることを、一生をかけて教えてくれたのがダ・ヴィンチです。
人生諦めずに、何事にも挑戦していきましょう!

異分野に越境しろ!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2023年 4月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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