調和のとれた進化をするダ・ヴィンチの思考法

目次

2種のカメレオンの隠れた意味

ダ・ヴィンチ思考とは何か。前回の記事でその言葉の定義は、
「常識を超えて、幸せな“空飛ぶカメレオン”になるためのトランス・シンキング」
であるとお伝えしました。

前回記事:天才ダ・ヴィンチの思考法とは?

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ダ・ヴィンチはたくさんの人生を考えさせる寓話を残していますが、その中に、2種類のカメレオンが登場します。

「これは常に身の周りにある物の色に変色する。だからしばしば象によって葉と一緒に呑み込まれてしまう」

出典:パリ手稿H

「これは空気を食べて生きており、大気中はすべての鳥の餌食(えじき)にされる。そこで彼はもっと安全になるために、雲の上まで飛んで行き、自分を追いかけてくる鳥が耐えられないほどの薄い空気に到達する。このような高みでは、天与の適正を授けられている者しか生きていけないから、カメレオンはそこに飛んで行くのだ」

出典:パリ手稿H


私たちがよく知っているカメレオンは色を変えて周囲に同調する生き物です。ダ・ヴィンチがここでいう空飛ぶカメレオンは見たことがありませんので、それは唯一無二の存在といえるでしょう。

この2種のカメレオンは、2つのことを暗喩(あんゆ)していると捉えられるかもしれません。

その2つとは、「調和」「進化」です。

私たちが日々生きていく上でも、周囲に溶け込んで同調するのも時には大切なことです。
聖徳太子が制定した有名な十七条憲法の第一条は、「和を以て貴しと為す」ですが、古来より日本人には、和を重んじる精神が根付いていると感じます。

一方で、空中を上昇し続けるカメレオンのように、世の中を渡り歩くには、常に進化をし続けていくことも必要です。

実は、レオナルド・ダ・ヴィンチの言動を分析してみると、この調和と進化をバランスよく実行していたことがわかります。

ダ・ヴィンチの実践した調和とは?

「異なる半球に別れ住む人々に告ぐ。お互いの言語を理解し、一緒に語り合い、抱擁しあうように」

出典:アトランティコ手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチ



陸地続きの大陸に生きるヨーロッパ人、ダ・ヴィンチは、フィレンツェ、ミラノ、ローマと国内を転々とし、余生は異国のフランス、アンボワーズで生涯の幕を閉じました。

定住を好まなかったダ・ヴィンチは、異文化の人たちとも積極的に交流していました。
実際に、工房には一時期、ドイツ人の鏡職人がいたことがわかっています。

異文化情報にも敏感で、このようなメモを書き残しています。

「ヨーロッパ人は、長い爪は恥ずかしいものと見なすが、インディアンにとっては、模様で飾った長い爪が紳士にふさわしい身だしなみである」


ダ・ヴィンチは、自国の文化・慣習にとらわれずに、他国の国の考え方を知ろうとする努力をしていました。大切なことは、一度当たり前の常識というメガネを外し、フラットな目線で世界を眺めることです

生きていく上で、様々な人間関係上のトラブルに見舞われることがあります。
たとえば、ダ・ヴィンチの場合、叔父の遺産相続問題で、異母兄弟と裁判沙汰を経験しています。叔父は可愛がっていたダ・ヴィンチに全財産を譲る遺言を残していましたが、庶子(しょし)であったダ・ヴィンチは相続人としてふさわしくないと異母兄弟に訴訟を起こされたのです。フランス王の協力を得て、ダ・ヴィンチの主張は認められることになったのですが、ダ・ヴィンチの遺言書には、叔父からもらった遺産を異母兄弟に分配することが記載されていました。寛大な対応に異母兄弟も感動したはずです。

調和するためには、争いを避けて推し黙るのではなく、自分の主張はきちんと伝えつつも、和を保つための配慮を怠らなかったのが、ダ・ヴィンチのありのままの姿でした。
人間のみならず、動物を愛し、自然を尊重していたダ・ヴィンチは、まさに“生けるハーモニー”といえるでしょう。

ダ・ヴィンチの実践した進化とは?

ダ・ヴィンチは十分な教育を受けていなかったため、当時のルネサンス社会で第二言語として用いられていたラテン語ができませんでした。

知識人たちの集まりから「あいつは無学なやつだ」と非難されたことをノートに書き、悔しい思いをしたことを告白しています。しかしそれでめげるダ・ヴィンチではありませんでした。

知識不足は自分で経験をすることで補う決意をし、絵画や彫刻などの芸術の他、兵器の開発、舞台演出、乗り物の発明、人体解剖、ワイン作りなど、できそうなことは何でもチャレンジしていきます。

自分で実践しようにもわからないことに直面すると、答えを知っていそうな専門家に直接質問をし行きました。ダ・ヴィンチは、ノートに何度も口癖のように「教えてくれ」を意味する“ディンミ”という言葉を書き残しています。

まず自ら経験し、わからないことは人に尋ねる。問いの答えを教えてくれそうな人がいない場合は、書物にあたりました。中にはラテン語でしか書かれていない本も多かったため、40歳を過ぎてから語学勉強に精を出しています。

生涯死ぬまで学び続け、新しい自分にアップデートすることで、誰も追いつけないような万能の天才と呼ばれる域に達したのです。

宇宙は調和と進化の歴史

私たちが住むこの地球という星も、宇宙が調和と進化を繰り返した果ての結果です。

ビッグバンから始まったとされる宇宙は、最初から巨大な惑星があったのではなく、電子や原子などの目には見えない物質からスタートしたといわれています。

その後、138億年という長期間を経て、今のような広大な銀河が誕生しました。ゆっくりと時間をかけて宇宙はとんでもない進化を遂げたのです。

地球に生命が誕生したのも、絶妙な距離感にある太陽の恩恵を受けているからであり、まさに調和のバランスが取れています。私たちが今ここにいるのは、宇宙がバランスを保ち、変わり続けてきた結果なのです。

宇宙はこれからも調和をしながら無限に進化発展を遂げていくことでしょう。

私たちも、この宇宙のように調和と進化の2軸で生きれば、ダ・ヴィンチのように世間をあっと言わせる何かを達成することができるかもしれません。

次回は、ダ・ヴィンチ思考を別の側面からお伝えしようと思います。それではまた!

いついかなる時も、進化と調和の2つを忘れるな!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2023年 3月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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