ダヴィンチに学ぶブランディングとストーリーについて

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ダ・ヴィンチは500年も時代を先取りした研究をしていた

ブランドとは何か? なぜブランディングが必要とされているのか? 前回は、その経緯について解説しました。

その中で、商品やサービスは「物」自体から、「物語」というストーリー性に力点が変化しているという話をしました。

しかしながら、すでにストーリー性のある商品が当たり前になってきており、そこからさらに差別化をしないと、他の商品やサービスに埋もれてしまう危険性まで出てきてしまったことを指摘しました。時代は、「物語」を超える要素を求めています。まさに“ブランディング3.0”が必要なのです(※「ブランディング3.0」とは、ブランディングの最新形態と考えているものとなります。私が独自に命名したものであり、一般的な名称ではありません)。

その第3のブランディングとなるブランディング3.0について、私の専門分野である万能の天才ことレオナルド・ダ・ヴィンチから学んでみたいと思います。そう聞くと、「え? ダ・ヴィンチってだいぶ昔の人なのに、現代のブランディングについて学べることがあるの?」と思う方もいるでしょう。しかしダ・ヴィンチは、今から500年前のルネサンスの時代に、すでに何百年も先取りした研究をたくさん行っていた知恵者だったのです。

たとえばダ・ヴィンチは、コンタクトレンズの原理を当時すでに発見していました。ガラスの球面と人間の目を合わせると見え方が改善されることをノートにイラストつきで描いているのですが、380年先取りする先進的な研究でした。

ガラス玉が入ったガラス容器に顔を入れて水面越しに見ている人のスケッチ

天文学で、ガリレオに先駆けたダ・ヴィンチ

他にもダ・ヴィンチは月を研究していましたが、「地球照」という地球で反射した太陽光が、月の影の部分を照らし出し、月の全体像がうっすらと見える現象について、イラストつきでノートに描いています。ガリレオが望遠鏡で月を観察した100年ほど前のことです。そのため、ダ・ヴィンチの発見を讃えて、地球照は「Da Vinci glow」(ダ・ヴィンチの輝き)という別名を持ちます。

ダ・ヴィンチが地球照を描いたスケッチ

それとダ・ヴィンチは、今から500年前にロボットまで発明していました。

ここまでくると、まさにダ・ヴィンチは未来人なのではないか? という説や、ダ・ヴィンチ宇宙人説が出るのも無理からぬことと思います。もちろん今ほど高度なものではありませんが、まだ自動車もカメラもない時代に発明していたことに驚かされます。

そして何より重要なことは、そのダ・ヴィンチが考えたロボットに、ブランディング3.0の秘密が隠されていることです。

なぜダ・ヴィンチは、ライオン型のロボットを発明したのか?

ダ・ヴィンチは人型のロボットも開発していましたが、実は後世に語り継がれたのは、ライオン型のロボットでした。

当時のある日、新しくフランスの王になったフランソワ1世のために、パーティーが開かれました。めでたいパーティーの場でプレゼントとしてよく渡されるのは、お祝いの花です。

しかしダ・ヴィンチは、普通に花束を渡すのではなく、わざわざライオン型のロボットを発明し、そのライオンロボに花を持って行かせたのです。あまりに予想外の演出にフランソワ1世は大変感動し、晩年、ダ・ヴィンチをフランスに呼び寄せて最後のパトロンとなりました。

なぜライオンだったのでしょうか? ライオンは、ダ・ヴィンチの出身地のフィレンツェ(共和国)を象徴する動物(国獣)だったのです。

そして、渡した花は百合でした。百合にも意味があります。百合はフランス王家の紋章を飾る花だったのです。

つまり、フィレンツェ共和国とフランス王国の両国の友好を表すモチーフとしてライオンと百合を選んでいたのです。ここには一種のストーリーが描かれています。いわゆるブランディングでいうところの情緒的な物語が組み込まれているのです。

ダ・ヴィンチ以外の人は、おそらく手渡しで花束をプレゼントしていたのではないでしょうか。この機械仕掛けのライオンロボは、歩いたかと思うと立ち止まり、胸の部分が開いて百合の花を届けたといいます。まさにダ・ヴィンチならではの演出ですが、想定外のインパクトがあります。AI時代の今日でもここまでの凝った演出は中々見かけませんが、ましてや500年前に見せられたらびっくりしたはずです。

単なる物語と一言では片づけられないほどのインパクトがある仕掛けこそが「ブランディング3.0」であり、私はこれを「物々しいいね!」という造語で表現しています。

「物々しいいね!」が現時点で最強である

「物々しいいね!」は読んで字のごとく、「物々しい」と「いいね!」を掛け合わせた言葉。これも私が勝手に考えた言葉です。

「物々しい」を辞書で調べてみると、「威圧感」や「大げさ」という意味が出てきます。どちらかというとマイナスなイメージがある言葉です。そこにプラスの言葉である「いいね!」を加えることで、「ステキな威圧感」であり「好かれる大げさ」という意味を込めています。

なぜこの「物々しいいね!」が必要なのかといいますと、機能的に品質がいいのは当たり前、情緒的なストーリーがあるのも当たり前、そしてその2つだけでは刺激が得られなくなってしまったからです。

みんなスマホを持ち歩き、5G社会で私たちは常に情報に接しています。情報の濁流に飲み込まれている私たちにとって、ちょっとやそっと質が良かったり、ストーリーがあったりするくらいでは、もはや反応しないくらい麻痺してしまっているのです。

そんな私たちの目を覚まさせるためには、ダ・ヴィンチが発明したライオンロボのような強烈なインパクトが必要なのです。

しかし、ここで1つ外してはいけない重要なポイントがあります。それは何かというと、物も良くて物語性もあるという前提条件をクリアしたうえで、「物々しいいね!」が発揮されてはじめて成功だということです。

ライオンロボが動かなかったり、百合ではなく薔薇(バラ)の花束を渡していたりでは意味がありません。

「物」と「物語」と「物々しいいね!」の3つが機能してこそ、人の心をつかむことができます。

物々しいいね!を考えよう!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2021年 8月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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