ブランディングとは?ダ・ヴィンチからわかりやすく学ぶ

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知ってるようで知らない「ブランディング」の正しい意味

「ブランディング」という言葉は、企業でも、そして個人でもよく聞くようになりました。私は、企業でブランディング講習のファシリテーター(司会)をしたことがあるのですが、「ブランディングってどういう意味か知っていますか?」と聞くと、「いや、よくわからないです」と答える方が意外に多かった印象があります。

「ブランドマネージャー認定協会」の定義によると、

発信側の企業が「こう思われたい」というブランド・アイデンティティを、受け手側が「こう思う」というイメージと一致させる活動をブランディングと呼ぶ

引用:ブランド・マネージャー認定協会

ということです。

たとえば、もし持っているだけでかっこいいと思わせたいスタイリッシュなパソコンがあったとしましょう。パソコンメーカーは“かっこいいライフスタイルの実現”を目指しているのに、購入する消費者が性能はいいかもしれないけどデザインがダサいと認識していたら、ブランディングは失敗に終わっているわけです。

ブランドと聞くと、シャネルやグッチ、ヴィトンなどの高級なファッションブランドを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、そのような高級品だけがブランドではありません。

ブランドとは、古ノルド語という北欧言語の言葉「brandr(ブランドル)」が語源で、“焼印をつける”という意味に由来するという説があります。その焼印は何につけていたかというと、所有している自分の牛です。遊牧している間に、自分の飼っている牛が他の人の牛と紛れてしまうとわからなくなるので、焼印を押して区別したそうです。

この牛のように、他の商品やサービスと違うものであると周囲に識別されていれば、それはもう立派なブランドなのです。

「ブランディングが大切!」「ブランディングができていない」などと言われることを時々耳にしますが、なぜブランディングが必要なのか? 段階を追って過去を振り返ってみると理解できます。

ブランディングは、不特定多数を最初から相手にするとうまくいかない

戦後、日本はとにかくモノ不足で、商品を出しさえすれば売れる状態がありました。需要過多で供給が追いついていない状況であれば、どんなモノを出していても売れます。たとえば現代でも、コロナ禍が始まった当初はマスクがなく、とにかくどこのメーカーだろうと安物だろうと、マスクの形をしてさえすれば飛ぶように売れたわけです。

ところが需要に供給が追いつくと、急に在庫の山を抱えているお店も見かけるようになりました。このマスクの事例のように、現代はモノが溢れ、身近なお店に行けば大抵の欲しいものが手に入ります。しかも近所で手に入れられないものでも、ネットで購入することができるため、基本的に何不自由なく暮らしていけます。

需要が満たされており、さらにライバルとなる競合もたくさんある場合、より強力に差別化できる要素が必要になりました。そこで登場したのがブランディングという概念です。

ブランディングは、発信側の企業が「こう思われたい」というブランド・アイデンティティを、受け手側が「こう思う」というイメージと一致させる活動であると言いましたが、ここで注意したいことがあります。それは、差別化した商品を生み出すためには、不特定多数を対象とするのではなく、特定のターゲットに絞り込む必要があるということ。そこでよく使われる単語が「ペルソナ」です。

ペルソナとは、元来はギリシャの古典劇で役者が使用する「仮面」のことを指していたのですが、そこからマーケティング用語に発展し、「見込み客となる人物像」を意味するようになりました。年は何歳で、性別は男女どちらで、仕事は何をしているかというように、ターゲットをより具体化したものです。さらには、家族構成や年収、具体的な会社名や住んでいる地域、朝は何時に起きて、職場まではどうやって通勤をし、どんなことに悩んでおり、帰宅後は何を楽しみに1日を過ごしているかまで細かく設定することもあります。こうして、ペルソナのリアリティある生活感を描いていくわけです。

できあがったペルソナを集中狙いして、喜ぶような商品・サービスの設計をしていく。これが、ブランディングではとても大事になります。ペルソナを設定せず不特定多数をやみくもにターゲットにしてしまうと、結果として作り手のメッセージが誰にも届かず、ブランディングは失敗に終わる可能性が高いのです。まさに虻蜂(あぶはち)取らずです。

例えば新しいスイーツを開発しているとしましょう。都内で子育てをしながら働く35歳のキャリアウーマンをペルソナにした場合、彼女は仕事と家庭の両立で忙しいはずです。多忙さをほっとリラックスできるちょっとリッチなスイーツで、なおかつ健康面に優れた配慮がされていると、ペルソナに響くものとなりやすいです。

ただし、ペルソナはあくまでもターゲットのど真ん中にいる人。それ以外の女性、また男性に売っていけないわけではありません。まずはペルソナを確実にお客さんになってもらい、口コミなどで知名度が広がっていき、やがてはペルソナ以外の人たちに届けばいいのです。

つまり、ペルソナの設定とは、企画(モノやサービス)を生み出しやすいようにするための導線作りなのです。

とはいえ、ペルソナに合わせた優れた商品が出来上がったとしても、それだけでは差別化ができたとはいえません。他にも美味しくて健康的なスイーツはたくさんあるので、美味しさやヘルシーという機能面以外での差別化が必要です。機能面以外で何を伝えればいいのかというと、それは情緒的な側面です。

ブランドは「物」から「物語」へ

この商品はどのようにして誕生したのかなどのストーリーで、情緒に訴えかけることがますます重要視されてます。とにかく「物」さえあればの時代から、「物語」が求められるようになったからです。誰がどこでどんな工程で、そしてどんな想いを込めて作ったのか…、作り手のエピソードが消費者にきちんと伝わらなければ、商品・サービスはなかなか売れない時代になったのです。

ところが、この物語によるブランディングも、多くの商品が当たり前のように作り込んできているため、さらなる差別化が必要になっていると感じます。ブランディングは3.0の時代を迎えたというのが、私の持論です。

次回は万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチの視点を交えて、一歩先のブランディングを考察していきます。お楽しみに!

人を納得させるには、オリジナルのストーリーが必要だ!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2021年 8月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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