絶大なインパクトで魅了する「対極共存思考」~ダ・ヴィンチも実践した究極の伝え方

ダ・ヴィンチ研究者の桜川Daヴィんちです。

前回は、望んでいる本質が見えてくる「対極思考」について、ダ・ヴィンチの実例を通してお伝えしました。

今回のテーマは、その応用編の「対極共存思考」です。

前回は、「美」を描きたいのであれば、まず反対の「醜」を知る。なりたい自分を描きたいなら、その前に、こうはなりたくないという自分を決める。
つまりは、理想の反対から、望むことにアプローチをするという内容でした。

今回は、対極的なことを同時に併せ持つ「対極共存思考」というものです。

目次

「対極共存思考」をするメリット

これからお話しすることは、「芸術は爆発だ」で有名な芸術家の岡本太郎さんも実践していた考え方です。

どんな考え方かというと、まず対立する2つの要素を共存させます。たとえば「具象と抽象」「静と動」「愛と憎」。反対の概念を同時に描きます。

常識とみなされていることに対して、それに反する「対極的」な考え方をぶつけ、一つの作品に融合させます。その反対同士がぶつかり合う緊張感が、見る人に大きなインパクトを与え、その矛盾について考えさせるのです。

そして、対極的なものを俯瞰することで、常識から解放され、新しい見方ができるようになります。

岡本太郎さんの有名な代表作に『重工業』という作品があります。人間が機械化する工程に巻き込まれる一方、機械と対極的な野菜であるネギが描かれています。ネギは、農家の方が手作業で育て上げたものです。世界は産業革命以降、機械化によって大量生産が可能になり、製造の効率化が実現しました。
その一方で、効率化によって失われたものもあります。たとえば、工場が排出する環境汚染によって豊かな自然が消滅しています。また機械化は、人間自体も画一化した温かみのない人間を生み出していると捉えることもできるでしょう。

岡本太郎『重工業』

このような「機械」と「ネギ」という全く相反する事象を同一画面に共存させることでドラマ性が生まれ、より深く考えるきっかけを与えてくれるのです。

みんな知らないダ・ヴィンチの絵の構造

レオナルド・ダ・ヴィンチもまさに対極で物事を考え、芸術に昇華させた人間でした。

たとえば、傑作『最後の晩餐』といえば、1人1人異なる動作が特徴的です。
一方で、机の上にはいくつかの料理とコップ、果物やパンが置かれています。人物のバラエティに富んだ身振り手振りの躍動感と、卓上に整然と均等に並ぶパンは、意図的に対比して描かれたように見えます。動的な人物を目立たせるために、静的なパンが引き立て役となっているのです。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 『最後の晩餐』

他には、ダ・ヴィンチのデビュー作として知られる『受胎告知』も「対極共存思考」で描かれています。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 『受胎告知』

『受胎告知』は、ガブリエルという天使が、処女のマリアに神の子を身籠ったという懐妊を告げるシーンが描かれています。この作品のテーマはこれから新しく誕生するキリストの「生」なのですが、ダ・ヴィンチの描いた『受胎告知』は一味違います。背景に均等に並ぶ糸杉が4本描かれていますが、西洋で糸杉は『死』の象徴です。「生あるものは必ず死に帰す」と言われるように、どんなに素晴らしい人でも、やがては死んでいかなければなりません。ダ・ヴィンチは、『生』と『死』を同時に描くことで、場面に緊張感を与えているのです。

もう1つ別の作品を紹介しましょう。
こちらはダ・ヴィンチのノートにスケッチされた兵士です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ 『盾と弓の兵士のスケッチ』

この兵士のどの部分が対極なのかというと、弓が盾を兼ねている点です。盾の真ん中より上に隙間が空いていて、この兵士はそこから照準を定めてますが、普通の弓は攻撃だけの武器なのに対し、ダ・ヴィンチが考案した弓は攻撃と防御、両方が共存しています。

このように1つが両方の側面を兼ね備えることができないかを考えると、新しい創意工夫につながります。

稲盛和夫のパーフェクトな仕事術

日々の仕事においてもこの対極を共存させることは有益な方法です。
たとえば、京セラの創業者である稲盛和夫さんは次のように言っています。

大胆さと細心さは相矛盾するものですが、この両極端をあわせもつことによって初めて完全な仕事ができます。この両極端をあわせもつということは、「中庸(ちゅうよう)」をいうのではありません。ちょうど綾を織りなしている糸のような状態を言います。縦糸が大胆さなら横糸は細心さというように、相反するものが交互に出てきます。大胆さによって仕事をダイナミックに進めることができると同時に、細心さによって失敗を防ぐことができるのです。大胆さと細心さを最初からあわせもつのは難しいことですが、仕事を通じていろいろな場面で常に心がけることによって、この両極端を兼ね備えることができるようになるのです。

引用:稲盛和夫オフィシャルサイト

他にも稲盛さんは、優れたリーダーは、優しさだけではダメで、言いたくないことも言えるような厳しがなければ人を導いていくことはできないと言っています。

マグネット人間を目指せ

磁石はN極とS極、反対の力を併せ持つ1つのアイテムです。N極とS極で周囲の砂鉄をたくさん引き寄せます。

私たちも、磁石のような相反する力を併せ持つマグネット人間になれば、大衆を魅了することができます。たとえば、自分が強面の外見の男性でありながらスイーツが好きということであれば、お菓子作りがプロ級というギャップを狙ってみるのもいいでしょう。

私は最近、気球のパイロットの資格を持つ人と出会いました。本業の仕事の話の最後に趣味の話になって、気球のことが発覚したのですが。一風変わった趣味を持つ人であることを知り、その人を見る目が変わりました。

あなたも、好きなことと得意なことを掛け合わせてインパクトを生み出し、影響力を養っていきましょう。

1つで満足せず、両極端のことを考えてみよう!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2021年 7月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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