望んでいる本質が見えてくる「対極思考」~ダ・ヴィンチの願望実現の型破りなルール

ダ・ヴィンチ研究者の桜川Daヴィんちです。

前回は、「やりたいことを見つける最も効果的な方法」についてご紹介しました。

最後に、脳を解放させる新しい刺激が必要だとお伝えしていましたが、固定観念から脱却できると、新しい物事に取り組みやすくなったり、世界の見方も変わるということです。

レオナルド・ダ・ヴィンチは、“万能の天才”と言われ、あらゆることに挑戦し、才能を発揮した人物ですが、実は独特の思考法を実践していました。

それが、「対極思考」です。

物事を考えるとき、まずは反対方向からアプローチし、次にもともと考えようとしていたことをアウトプットするというものです。

目次

ダ・ヴィンチはなぜ醜い人を描いたのか?

たとえば、ダ・ヴィンチは『モナ・リザ』に代表される美しい女性を描いていますが、いきなり美しい人を描くのではなく、その前に醜い人を研究し、何人も描いています。

「美」を知るにはその対極である「醜」を知らなければならないと、街中を歩いてグロテスクな人物を見つけては、スケッチをしていました。その時のスケッチがこちらです。

レオナルド・ダ・ヴィンチ  『グロテスクな人物』

5枚の人物スケッチを見る限り、お世辞にも美しいとは言い難い風貌で描かれています。ダ・ヴィンチの愛弟子であるフランチェスコ・メルツィは、その醜い人物にそっくりな人間を、より鮮明なタッチで描いています。このスケッチも、もともとダ・ヴィンチが描いていた模写である可能性が指摘されています。

フランチェスコ・メルツィ  『グロテスクな人物』

普通、グロテスクな人物を好んで描く人はいないでしょう。

ダ・ヴィンチは、さまざまな醜い人物を取り上げ、右から左から、斜めからと、アングルを変えました。多様な表情を観察していることが分かります。

「醜」を知ってこそ、正反対の「美」とは何かが見えてくる。ダ・ヴィンチはそう考えながら描いていたのではないかと思います。この対極的なアプローチは、実は絵の中だけではなく、文章にも表れています。

謎を秘めた2種類のカメレオン

ダ・ヴィンチの残した『パリ手稿H』と呼ばれるノートの中に、一風変わった不思議な文章があります。『イソップ童話』のような動物のエピソードを通して、人生の格言を伝えています。その中の1つに、カメレオンが出てくるのですが、2種類登場しているのです。

カメレオン――この生き物は、常に周囲の物の色に変色する。だから、しばしば象によって葉と一緒に呑み込まれてしまう。
カメレオン――この生き物は、空気を食べて生きており、空中ではあらゆる鳥に襲われる。そこで安全地帯を求めて雲の上まで飛んで行き、自分を追いかけてくる鳥が耐えられないほどの薄い空気に到達する。このような高みでは、天賦の才がある者しか生きていけないから、カメレオンはそこに飛んでいくのだ。

カメレオンといえば、周囲の環境に自らの色を同化させることができるのが特徴ですね。最初のカメレオンは、私たちが知っている「一般的なカメレオン」です。

一方で、2つ目のカメレオンは、空を飛ぶという「常識破りのカメレオン」です。
これは一体何を意味しているのでしょうか?

先ほど、ダ・ヴィンチは動物を通して人生の格言を言っていると書きましたが、
この2つのカメレオンは、2つの生き方を示しています。

最初のカメレオンは、周囲に同調して、他人に合わせる生き方、つまり「他人軸」で人生を終える人です。

それに対し、2つ目のカメレオンは、他人に反対されてもそこを突っ切ってしまう生き方。「出る杭は打たれる」と言いますが、「出過ぎた杭は打たれない」とも言われます。

自分自身の魅力を最大限に発揮した「自分軸」で生きる人生だとも考えられています。これはきっと、ダ・ヴィンチが「万能の天才」として、周囲を認めさせた自分のことを言っているのでしょう。

そして、「他人に合わせているうちに人生は幕を閉じてしまう。だから困難なこともあるけど、自分を輝かせて高みを目指してみたらどうだ?」。そう投げかけている文章だと私は解釈しています。

「やりたくないことリスト」を作成してみる

以上のダ・ヴィンチのエピソードから、次のことが言えます。

「どんな人生を生きたいかを考えるときに、まず「こうはなりたくないな」という人生を描いてみることで、本当はどうなりたいかが見えてくる」

前回は、「やりたいことが見つかる最も効果的な方法」についてご紹介していましたが、他の方法としては、まず「やりたくないことリスト」を作成してみる、ということです。

やりたいことを見つけるために、その反対のやりたくないことを考えてみると、やりたいことが明確になってきます。

たとえば、
【やりたくないことリスト】
A:満員電車にゆられて精神的なストレスを抱えながら通勤すること
B:共感ができず、気が合わない人と行動を共にすること
C:いつも頭痛やめまいで体調が悪く、いざという時に実力を発揮できない

 ↓

【やりたいことリスト】
A’:徒歩や自転車通勤ができる距離に住む。もしくは、フリーランスの仕事やリモートワークで働ける環境を探す
B’:お互い尊重できるパートナーを見つけて結婚をする
C’:睡眠やバランスの良い食事を心がけて、快適なコンディションで毎日を送る

【やりたくないことリスト】を【やりたいことをリスト】に置き換えることができ、自分がどういうことをしたいのか、その方向性が見えてきます。マイナス要因を見つめてみることで、プラスのビジョンがクリアに見えてくるのです。

今回はダ・ヴィンチが実践していた「対極思考」について、事例を用いてご説明しました。

そして実は、この「対極思考」の応用編である「対極共存思考」というものがあるのです。次回にお伝えしますので、お楽しみに!

あなたのやりたくないことは何ですか?

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2021年 6月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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