レオナルド・ダ・ヴィンチの解剖学の専門家からの学び 【7種類の師匠】

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◆ 何歳になっても謙虚に学ぶ姿勢を忘れない

レオナルド・ダ・ヴィンチには7種類の師匠がいた!? というシリーズ記事でバラエティに富んだ先生を紹介しています。あなたも最適な先生に恵まれることで、ダ・ヴィンチのような天才になれるかもしれません。それでは具体的にみていきましょう。

今回は4番目の専門家編です。

ダ・ヴィンチと聞くと、すごく頭のいい天才というイメージを持たれています。実際、生まれ持った天賦の才もあったのだと思いますが、人と会って成長していった面も見過ごすことはできません。年齢が50歳を超える頃、すでにヨーロッパ中に名を馳せ、有名人となっていたダ・ヴィンチでしたが、人体への興味が尽きず、パドヴァ大学の高明な解剖学者マルカントニオに弟子入りをしています。

マルカントニオ教授はまだ20代で、ダ・ヴィンチには、30歳年下からでも優れた人であれば謙虚に学ぶ姿勢があったのです。まず謙虚であることは、学んで成長していく上で欠かせない要素です。ダ・ヴィンチは生涯で25年ほど解剖学に傾倒していたようですが、この解剖学者との出会いによって、根本的に研究方法が変化していきました。

◆ ダ・ヴィンチは、なぜ解剖をしたのか?

芸術家であるダ・ヴィンチが、そもそもなぜ解剖をしたのか?

私が考えるに、これには大きく2つの理由があります。

 画家としてより精緻でリアルな人物画を描くため 

 生命の神秘を解き明かして人類に貢献するため

①は、ダ・ヴィンチが尊敬する先生であるアルベルティが、画家は人体の骨格を意識して絵を描くべきだと主張していましたし、ダ・ヴィンチの直接の師匠であるヴェロッキオも解剖学を学んで絵を描いていました。解剖学は画家にとって、いわゆる時代のトレンドだったのです。

②は、ダ・ヴィンチの実体験に基づいています。フィレンツェのサンタ・マリア・ヌオーヴァ病院で、ダ・ヴィンチは100歳を超える老人に出会いました。この老人は、身体の衰弱以外には何の悪いところもないことをダ・ヴィンチに伝え、ベッドに座ったまま安らかに亡くなりました。

「苦痛のない死の原因とは何か」を探るために、実際に彼の解剖を行って、心臓と体を養う動脈内の血液の欠乏が原因であることを特定しました。死の原因の追求と同時に、ダ・ヴィンチは生命の誕生の謎を追求しています。性交図や胎児のスケッチが残っているのはそのためです。

『解剖手稿』胎児と子宮の内部・性交中の男女の正中断面図/レオナルド・ダ・ヴィンチ 

◆ 専門家から学んだスゴイ成果

驚くべき描写力で解剖図を描いていたダ・ヴィンチですが、独学で研究していた際には、間違いを犯すことが多々ありました。例えば、先ほどの性交図では、女性は子宮から乳房に1本の管が接続、男性は精巣から心臓に向かって管がつながっています。このような描写は、ダ・ヴィンチ以前の解剖学ではそのように書物で語られており、それを学んだダ・ヴィンチが影響を受けてしまったことを示唆しています。

解剖研究の初期には、このような不正確な描写をしていたダ・ヴィンチでしたが、マルカントニオ教授と出会うことで正確さが格段に上がり、医学史上初めて「肝硬変、動脈硬化、血管の石灰化、冠動脈閉塞」が記録されています。さらに、「毛細血管」という用語を初めて使ったのもダ・ヴィンチという、数世紀を先取りした発見をしていました。

残念ながらダ・ヴィンチの残した膨大な解剖手稿はダ・ヴィンチの生前中に出版されなかったので、正式には最初の発見者とはなっていません。

もし出版されていれば、画家のダ・ヴィンチとしてではなく、解剖学者ダ・ヴィンチの方が世間に知れ渡っていたのかもしれません。それほどの業績を残せたのは、やはり専門家から直接学んだことが大きく、独学ではたどりつけなかったことなのです。

そのような功績からか、アメリカで開発された手術支援ロボットの名前は「ダ・ヴィンチ」と名づけられています。元々数億円する高額のロボットでしたが、特許切れに伴い、日本でもますます普及する可能性が高まっています。こちらに従来の手術との比較がわかりやすく説明されていますので、ご興味があればご覧ください。出典:三井記念病院 ダ・ヴィンチの紹介

◆ 餅は餅屋

ダ・ヴィンチは解剖学者に学び、まだ人類が明らかにできなかった人体の構造を解明しました。自分で調べてもわからないことでも、専門家に聞くとすぐに解決できることがあります。

私の身近な例をご紹介させて頂きます。

かれこれ20年ほど1人暮らしをしているのですが、初めて本格的にトイレ詰まりを経験しました。自分なりにネットで調べて解決する方法を試してみたのですが、一向に解消されません。放置することもできないので、専門の業者の方に来てもらいました。

その結果、数分でものの見事に解消されたのですが、素人には復元は難しい内容だったと言われていました。なぜ詰まったのかを聞いてみると、元々私の家のトイレは節水タイプで水の流れが弱い。

そして、トイレットペーパーはシングルではなくダブルのものを使用しているので詰まりやすいとのこと。専門家の方に聞くまで気づかなかったことです。

詰まりを解消するには、薬剤と専用のポンプを使うのですが、薬剤を使うと固形物が柔らかくなり、またぬめりで滑りやすくなるそうです。何となく、トイレットペーパーはシングルよりはダブルの方がいいと思っていましたが、詰まり防止の観点からいうと、シングルのトイレットペーパーの方がいいということがわかりました。

ちなみにこんな話も聞きました。

ある方が詰まる要因がまったく思い当たらないのになぜか詰まってしまった。原因を調べてみると、ペットである犬のフンを流していたのですが、そのフンに爪楊枝よりも細い小枝が入っていて、それが詰まりの原因になったといいます。自分で調べることも大切ですが、わからない時はしかるべき専門家に尋ねてみましょう。

今回は、ダ・ヴィンチがなぜ解剖学者に学んだのかを紹介しました。解剖図にはまだまだ面白いスケッチがありますので、次回はスケッチ中心にご紹介をしたいと思います。

お楽しみに!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2021年 6月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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