良い商品=優れた機能+心を動かすデザイン
モノが溢れる時代となり、日本では生活する上で不自由しないのが当たり前。より便利で豊かな生活を送るために、さまざまな付加価値商品が生み出されています。
最近私は体重計を買ったのですが、その体重計はスマホのアプリと連動し、BMIや体脂肪率が数値でわかる仕組みになっていました。コロナ禍が続く日々で、予防医学指導士の資格取得コースも行われるようになっています。
他の商品といかに差別化し、消費者の手にとってもらえるか。
性能などの機能面に加えて大切なポイントがデザイン面です。同じ機能を持つ2つの商品があれば、価格と見た目で比較検討しますよね。
多少価格が高くても、見た目が気に入ればそちらを購入することもあるため、見た目の印象作りも大切な要素です。見た目について考えることは、商品だけではなく、イベントの開催や、ネット上での見せ方でも欠かせないため、何か新しい企画をしようとする時にはよく検討することが重要です。
今回の記事では、世界一の画家として有名なレオナルド・ダ・ヴィンチの発想に学びます。
ポイント1:同じ形状を連続させる
ダ・ヴィンチが書き残したノートには、大量の幾何学図形が描かれています。あちこちにいろいろな形状の図形が見受けられますが、アトランティコ手稿というノートには、驚くほど集中して幾何学図形を描いているページがあります。
一つの図形だとそれほどインパクトはありませんが、重ねて描くことで全体の印象が強くなります。
ある日、京都の四条通りを歩いていた際、「花遊小路(かゆうこうじ)」という細い路地を見つけました。写真は夜だったのでお店が閉まっていますが、ふと見上げると天井に和傘が敷き詰められていて、なんとも風流な演出に感動しました。
これをさらにインスタ映え効果として大々的に利用している観光スポットがあります。
有名なのは、長崎ハウステンボスのアンブレラストリートです。
1本の傘であれば雨露をしのぐ道具にしかなりませんが、大量にあるとアートに変わります。
https://www.fashion-press.net/news/67629
ちなみに12月は、アンブレラストリートがクリスマスエディションになります。
https://www.huistenbosch.co.jp/event/schedule/699/
他にも福島県に、猪苗代ハーブ園というところがあります。アンブレラスカイプロジェクトという演出が秀逸で、行った人は思わず写真を撮りたくなってしまうでしょう。
https://travelers.whg-hotels.jp/jp/post/10311/
同じものを連続させるとアートに変貌する、これを覚えておきましょう。
ポイント2:多様性
ポイント1とは反対に、今度は同じものは極力使わない見せ方です。
ダ・ヴィンチは、絵を描くときに多様性のある描き方を心がけていました。たとえば人物画を描く時には、このように言っています。
『人体というものは、均整がとれていたり、太って背が低かったり、痩せて背が高かったり、中肉中背のような場合もある。それなのに、このような多様性に留意しない画家は、人物像をいつも型通りに描くので、すべての人が兄弟のように見えてしまう。これは大きな非難に値する。
物語絵を制作する画家は、人数の多さとその多様さを心にかけ、そのいかなる部分でも、同じものの繰り返しは避けよ。数の多さとその多様さが、その物語絵を眺める人を引きつけて、その眼を喜ばすようにするからである。物語絵に求められるのは、その物語のおこる場面に、多様な顔をした多様な年齢と服装の人々が混じり合い、彼らと一緒に女たちや子供たち、犬、馬、建物、野原や丘などが混じり合っていることである、とわたしは言おう。』
ウルビーノ稿本 レオナルド・ダ・ヴィンチ
傑作の1つである『最後の晩餐』は、よく見ると1人1人の動作が異なります。それはダ・ヴィンチの多様な表現をすべきという信条の表れなのです。
ウルビーノ稿本 レオナルド・ダ・ヴィンチ
多様性へのこだわりは、人物描写にとどまりません。
自然を描く際、木1本1本、葉1枚1枚においても、それぞれの個性を描き分けるべきだと主張しています。
『たとえさまざまな種類の樹木が君から等距離の所にあるとしても、多くの画家がするように、それらをすべて同一の緑色にしてはならない。同様のことが野原についても、樹木についても、さまざまな種類の土地や岩地についても、また前述の幹についてもいえるのであり、それらは常に多様であるが、それは自然が無限に多様なものだからである。しかも、種類が多様であるだけでなく、同じ種類の樹木であっても、さまざまに異なる多様な色が見出せる。たとえば、ヤナギならば、細い枝よりも太い枝の方が、大きくて美しい葉をつける。しかも、自然は、多様性を増やすことを好んでいるので、同じ種類の樹木でも、一本として他とそっくりの樹木はない。しかも樹木だけでなく、枝や、葉や、実でも、他と正確に一致するものは見出せない。だから、以上のことに注意して、できるかぎり多様に描け。』
「神は細部に宿る」という言葉がありますが、このような細かいところに神経を使ってこそ、人を感動させるインパクトを生み出せるのではないでしょうか。
ポイント3:意外な組み合わせ
インパクトを生み出すために大切なことは、意外性を作れるかどうかにかかっています。ありきたりな表現では目に止まらないので、今までにはなかったような創造性が問われます。
ダ・ヴィンチのノートをひもといてみると、無秩序なメモや雑多なスケッチに驚かされます。その都度、思いついたことを空いてるスペースに書き留めるスタイルは、一見無関係に見える物事同士の化学反応を狙っているかのようです。
アシュバーナム手稿というノートには意外な組み合わせを実践した発明がスケッチされています。何と何を組み合わせたかというと、太鼓とサイコロです。
地下道が描かれていて、その道路の上に太鼓、太鼓の上にはサイコロがのっています。
スケッチでは、地下道が堀り進められているのですが、その掘った振動が太鼓に伝わり、サイコロが跳ね上がるということを表現しています。サイコロには数字の目がありますが、少し大きな振動があれば別の数字にひっくりかえります。
太鼓とサイコロはふつう出合うはずがない無関係のものですが、ダ・ヴィンチはこのように組み合わせることで、新しい発明をしたのです。
出合うはずがないものをうまく組み合わせると意外性を演出することができます。固定概念にとらわれずに、組み合わせるチャレンジをしてみましょう。
以上、ダ・ヴィンチ流斬新なインパクトのつくり方について解説しました。次回は、ダ・ヴィンチ思考を取り入れて創造した事例を紹介したいと思います。お楽しみに!
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2022年 12月 公式掲載原稿
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)