恐れか、それともワクワクか
歴史上、最も好奇心が強いとささやかれる偉人、レオナルド・ダ・ヴィンチ。
『モナ・リザ』という名画を描いた画家として知られていますが、彫刻や音楽、舞台演出や建築分野でも創造的な才能を発揮しました。音楽や舞台演出の記録は残念ながら残っていませんが、特に舞台作品は同時代の人から絶賛されて、再演のオファーがかかっています。
芸術分野にとどまらず、発明家や研究者、哲学者的な側面もあり、まさに世界の真実の解明に努めていた人物がダ・ヴィンチといっていいでしょう。ルネサンスの万能の天才と言われる所以です。
では、なぜダ・ヴィンチがそれほどまでに多彩さを発揮できたのか。この原因は1つに特定できるものではなく、先天的な才能、後天的な才能の組み合わせといえるかもしれません。
ただ一つ確かなことは、他人の目を気にせず、そして、損得勘定もせずに、己の好奇心に純粋に従ったこと。
「他の人がやってないから自分もしないでおこう」
「これは儲けにつながらないからやっても意味がない」
もし、そう思っていたら行動できる幅が狭まってしまいます。ダ・ヴィンチのノートを読む限り、そんな研究をして一体何になるんだろう? と思ってしまう考察がよくありますし、取り組んだことがやがてビジネスにつながるという商売人のような気配はあまり感じられません。
そして、もう1つ大切なことは、未知のことに対して恐れを抱くのではなく、ワクワクを抱けるかどうか、ということです。
ある日、ダ・ヴィンチが森を散策していた際、得体の知れない洞窟を発見しました。洞窟の中を手をかざして見ようとしますが、真っ暗闇で何も見えません。
その時に、怖いと恐れの気持ちを抱くか、あるいは面白そうとワクワクしてくるか、大抵は両方の感情が混ざっているでしょう。ワクワクが恐れに勝れば、その先に進むことができます。
実際に、ダ・ヴィンチは恐れの感情に打ち勝って、洞窟を探検したようです。
そのような未知の体験を繰り返すうちに、自然と好奇心が養われます。もっと新しいことにチャレンジしてみようという意識が湧いてくるのです。
おすすめの未知の世界
未知の世界に入ると好奇心が養われると言いましたが、森を散策中にふと遭遇した洞窟に入ってみるというのは、実際ハードルが高いと思います。
個人的なおすすめは、人工的に整備された鍾乳洞です。
私は先日沖縄本土にある「玉泉洞(ぎょくせんどう)」という国内最大級の鍾乳洞に行ってきました。100万本以上の鍾乳石を擁し、全長、約5,000メートル。日本第2位の長さを持つ鍾乳洞です。そのうち、890メートルは観光用の洞窟としてライトアップされています。
入り口から入ると、そこにはまるで映画で見るような、異世界の地底空間が広がっています。
ちょうどハロウィンの時期だったこともあり、期間限定でこんな写真スポットも用意されていました。
鍾乳洞の内部にはいろいろな生物が存在しています。代表的なのはコウモリですが、コウモリは、洞窟内にいる昆虫を食べて生息しています。
洞窟内部には、川が流れており、そこにウナギやフナ、エビなどがいます。実際にエビも観賞用に水槽の中に入っていたものを見ることができましたが、私たちが普段知っているエビとは異なり、ちょっと変わった色合いをしていました。
まさに鍾乳洞は自然が生んだ神秘体験を感じることができる場所です。怪しげなネオンに彩られ、幻想的な空間になっています。
本物の洞窟体験をしてみよう
実は、この玉泉洞、観光洞窟以外の未公開エリアも探検することができます。
「南の島の洞くつ体験」というアドベンチャーで、ケイビングインストラクターが引率してくれます。1人で洞窟に入るとなると足がすくみますが、慣れている方と一緒に入れば安心ですね。
観光用の洞窟では、生物を見かけなかったのですが、未公開エリアはコウモリが生息する空間にも立ち寄りますので、より本物の洞窟を体感できます。
水深1メートルのところも通過していくため、水着の着用も推奨される本格さです。
所要時間は、2時間半の完全予約制。ツアー時期は7月中旬から9月までの期間限定です。
興味深いことに、「洞窟学」という学問分野もあるそうです。
地理学、鉱物学、生態学、考古学、人類学、美術史学、観光学、物理学、化学、生物学、地質学、古生物学などを包含する学問で、洞窟の森羅万象を明らかにすることを目的にしています。
洞窟に深く触れることは、同時にいろいろなことに関心を持つきっかけにもなるということです。
詳しい参加方法については、下記のHPを参照してみてください。
「南の島の洞くつ体験」
https://www.gyokusendo.co.jp/okinawaworld/okinawacavetanken/exploration.html
好奇心を養うコツ
この記事を読んでみて、鍾乳洞に行ってみたくなりませんでしたか?
異世界は新鮮なので、どんな人でも好奇心が起きやすい空間です。
物事何でもそうですが、何か興味があることがあれば、ハードルが低めのものにチャレンジしてみることが大切です。
いきなり真っ暗闇の自然の洞窟に行くよりも、まずは観光用の鍾乳洞、次にインストラクター引率の鍾乳洞と、これなら安心して興味を深められるという環境が必要です。
初めからハードルが高いことに挑戦してしまうと、次に進めなくなってしまい、興味の扉が閉じてしまう可能性があります。
安心して取り組める環境づくりを第一に考え、好奇心を養っていきましょう。
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2022年 12月 公式掲載原稿
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)