今後生き抜くには、自分をブランド化することが一層重要になってきた
コロナ禍・働き方改革・長寿社会と、時代の変化に応じてライフスタイルも変化し、自分の生き方を見つめ直している人が多い昨今。年金問題や、終身雇用は保証ができないと宣言する企業もあり、自分の身は自分で守る必要性が出てきました。
今会社員の人であれば、「いつか起業をしてみたい!」と考えている方もいるでしょう。将来を見据えている人、あるいはすでに個人で事業を立ち上げている方にも知っておいてほしいこと、それが今回ご紹介する「セルフブランディング」です。
セルフブランディングとは、「自分自身をブランド化」するということですが、このセルフブランディングを上手に実行していたのが、意外にもルネサンスの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチでした。ダ・ヴィンチは、500年前にロボットなど先見性のある発明をいくつも手がけていますが、すでにブランディングの重要性も理解し、実践をしていたのです。
まず、自分自身のセルフブランディングについて解説する前に、商品におけるブランディングの要点をお伝えします。どんな商品でもコンセプトを決めてから、具体的な商品作りに入るわけですが、人の場合も同じです。
「自分はどんな存在を目指し、周囲に対してどのような貢献をしていくのか」、ブランドアイデンティティといわれる存在意義を定義することが先決です。この定義を決めずに手法を先行させるとやがてブレてしまいますので、最初に自分の原点を明確化しておくことが大切です。
私がダ・ヴィンチ研究者として、ダ・ヴィンチのブランドアイデンティティを考えてみると、「万能の天才を目指して洗練された革新的な創造を行い、後世の人々をも幸せにする」ではなかったかと想像します。まず自分の人生の軸を作る、それがとても大切なことです。
ブランディングは中長期的戦略
さて、もう1つ大事なポイントをお伝えしておきたいと思います。ブランディングは、完成したからといって、すぐに劇的な変化が起こるのかというと、そうではない場合が多いです。どちらかというと中長期的な戦略であり、ブランドは育ててこそ大きな効果を発揮します。
まず、そのブランドを認知してもらう必要があるのです。認知してもらうためには、刺激を設計する必要があります。この設計は2つあり、「①ブランド体験」と「②ブランド要素」を決めていきます。
「①ブランド体験」は、「どのようなサービスを提供するのか」「どのような雰囲気の空間を味わってもらうのか」といった実際にそのブランドを体験してもらうことです。
「②ブランド要素」は商品の場合、次の9つの要素があります。
1)ロゴマーク
2)ネーミング
3)キャッチコピー
4)パッケージ
5)色
6)音/音楽
7)ドメイン
8)におい
9)キャラクター
「7)ドメイン」は、聞き慣れない言葉かもしれません。ドメインとは、◯◯◯.comというように、ホームページを検索した時に表示されるURLです。つまりドメインというのは、WEB上での土地を意味します。
セルフブランディングでも、独自のドメインを取得することが推奨されています。セルフブランディングでいうところのドメインとは「どこに住んでいる人なのか」ということです。ニューヨークにいるのか、東京にいるのか、北海道にいるのか、それによって印象がだいぶ変わりますよね。
最後の「9)キャラクター」というのは、企業では、たとえば不二家のペコちゃんなどが該当します。
セルフブランディングの場合は、自分自身をキャラクターとして演出します。タレントの小倉優子さんが、昔「こりん星」といって、不思議ちゃんキャラとして活動していましたが、これがそうです。結婚・出産後は、ママタレントと位置づけを変えていますね。他には、魚好きで知られるさかなクンは、まさに自分をキャラクター化しているわかりやすい事例です。
WEB上でのセルフブランディングの事例としては、ユーチューバーのヒカキンさんが、動画の開始時に必ず言う「ブンブン ハロー ユーチューブ」の決まり文句が該当します。毎回言い続けているのは、ブランディングの一環だからです。
ダ・ヴィンチはセルフブランディングをどう実践した?
では本題に入っていきたいと思います。500年前、レオナルド・ダ・ヴィンチはどうやってセルフブランディングをしていたのでしょうか?
ブランド要素の1つ目には、先ほど挙げた通り「ロゴマーク」がありました。実は、ダ・ヴィンチもロゴマークをいくつもデザインしています。たとえば、知的な人たちが集まるサークル「ダ・ヴィンチ・アカデミー」を立ち上げようとした時に、こんな美しいロゴを作成しています。
洗練された複雑な模様が整然と折り重なるロゴですが、この円の縁にある形と、ダ・ヴィンチがデザインしたコンパスの形状は、とても似ています。
ダ・ヴィンチがデザインしたコンパス(左:デッサン 右:デッサンを元にCG化したもの)
実は、この形状、ダ・ヴィンチが手がけた他のものにも見られます。今でも現存しているスフォルツェスコ城内部のアッセの間、その天井部分です。ダ・ヴィンチがミラノにいた際、パトロンから頼まれて描いた天井画ですが、拡大してみると、やはり類似する形状が散りばめられています。
アッセの間 天井(筆者撮影)
さらに、『モナ・リザ』の服にもよく見ると、近しい模様がデザインとして描かれていますね。『モナ・リザ』には、ダ・ヴィンチのサインは入っていないものの、ロゴに使用していた模様を入れることで、自分が描いた証となっているのです。
9つのブランド要素を刺激として運用していく際、大切な3つのポイントがあります。それは、「①意図的」「②一貫性」「③継続」です。ダ・ヴィンチも、この3つのポイントを遵守し、いろいろな作品の中で展開していました。ぜひセルフブランディングを構築する際の参考にして頂ければと思います。
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2021年 8月 公式掲載原稿
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