天才ダ・ヴィンチの思考法とは?

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一言で伝える

歴史上いろいろな天才が生まれ、人類史に名を残してきました。音楽であればモーツァルト、絵画ではピカソ、物理ではアインシュタインなどが思い浮かびます。その中で、私がレオナルド・ダ・ヴィンチに興味を持って研究を始めたのは、ダ・ヴィンチが絵画の分野だけではなく、科学的な発明や人体の解剖など、“万能の天才”という分野を越境する活躍をしていたところに魅力を感じたからです。

では、その万能性の要因を知るにはどうすれば良いか?

幸い、ダ・ヴィンチは膨大なノートを書き残しており、それを読めば何かヒントがつかめるのではないかと考えました。ノートを読んでみると、考察したことや雑多なアイディアが書き留められていて、天才の思考がうっすらと見えてきます。

ある日、機会を頂いてダ・ヴィンチ思考についてプレゼンをしたのですが、その際に「ダ・ヴィンチ思考って一言で言うと何なのか?」という質問をされました。

いろいろな思考の特徴があると伝えた上で、私は紙芝居を使った少し変わったプレゼンをしていたので、「実はこのプレゼン自体がダ・ヴィンチ思考そのものです」と回答しました。質問された方には、ちょっと意外な回答だと受け取られたことでしょう。

しかし、一言でシンプルに説明できた方が説得力があるのも事実です。前回私はダ・ヴィンチの思考習慣である物事を定義するという記事を書いていますが、一言で表現するには何がふさわしいのかを考えていました。

ダ・ヴィンチに学ぶ!「定義づけ」で創造力を高める

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世の中では、どんな思考法が注目されている?

ダ・ヴィンチ思考の解説に入る前に、世の中ではどんな思考法が注目されているのかを調べて見ました。以下の3つの思考法はいずれもベストセラーとなっています。

『ゼロ秒思考』(赤羽 雄二・ダイヤモンド社)という本がありますが、ゼロ秒思考の定義は、「A4の紙に1枚1分でメモ書きをすることで即断力を高め、思考の質とスピードを上げる考え方」です。マッキンゼー出身の著者が、メモをすることで「考える力」が鍛えられ、“頭がよくなる”思考法を紹介しています。

『13歳からのアート思考』(末永 幸歩・ダイヤモンド社)であれば、アート思考とは、「アーティストが作品を創造するときと同じようなプロセスを用い、『自分だけの視点』で物事を見て、『自分なりの答え』を作り出すための思考法」自分の内側にある地下世界を冒険し、自分なりの探求を続ける手法で、実はレオナルド・ダ・ヴィンチも例に挙げられていました。

『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン 著、高橋璃子 訳・かんき出版)とは、「99%の無駄を捨て、1%に集中するための思考法」“最小の時間で成果を最大にする”というキャッチコピーがついているように、大事なことに集中するための効率的な考え方が紹介されています。

いずれも、「もっと即断力をつけたい」、「自分なりの答えを見つけたい」、「要領よく物事をこなしたい」、という潜在的なニーズに答えた思考法でした。

では、次にダ・ヴィンチ思考について検証してみたいと思います。

「空飛ぶカメレオン」になるために

ダ・ヴィンチ思考の定義を私なりに一言で表現すると、「常識を超えて、幸せな“空飛ぶカメレオン”になるためのトランス・シンキング」です。
この“空飛ぶカメレオン”という不思議なカメレオンは、ダ・ヴィンチのノートに登場します。面白いことに、2つのカメレオンについて比較する形で文章を書いています。

「これは常に身の周りにある物の色に変色する。だからしばしば象によって葉と一緒に呑み込まれてしまう」

出典:パリ手稿H 


カメレオンといえば変色、変色といえばカメレオンというほど、カメレオンには色が変わるイメージがあります。

しかし、周囲の色に合わせて外敵から身を守っていたところ、それが葉っぱだと誤認した象にペロリと食べられてしまうと、ダ・ヴィンチは言っています。

では、もう一つの空飛ぶカメレオンの文章はどうでしょうか。

「これは空気を食べて生きており、大気中はすべての鳥の餌食(えじき)にされる。そこで彼はもっと安全になるために、雲の上まで飛んで行き、自分を追いかけてくる鳥が耐えられないほどの薄い空気に到達する。このような高みでは、天与の適正を授けられている者しか生きていけないから、カメレオンはそこに飛んで行くのだ」

出典:パリ手稿H


カメレオンが空気を食べており、上空をはるか彼方へ飛んでいく。そんなことは普通考えられないので、明らかに常識を超えています。ダ・ヴィンチはイソップ童話などに影響を受けて、人生を考えさせるようなたくさんの寓話を書き残していました。そのため、単なる空想上の不思議な生物のことを言いたかった訳ではありません。

ここでは、「周囲に合わせて一生を終えるのではなく、自分を進化させて誰にも追いつけないところに到達して幸せになろう」、そんなメッセージを言っているように聞こえます。

ダ・ヴィンチ思考をわかりやすく言うと、自分や物事の殻(から)を破り、変革を起こすための思考法です。

ダ・ヴィンチ思考はAI時代に必要な思考法

なぜダ・ヴィンチ思考が必要なのかというと、人生100年時代に突入し、AIやロボットが人間の仕事を代替していく中で、今後生き方を見つめ直す必要性がますます出てくるからです。

レオナルド・ダ・ヴィンチは500年前の人物ですが、何百年も先取りした研究を行い先見性のある視点に優れていました。そんな時代を超越するような彼の思考法を学ぶことが、現代を生き抜く上でも大きなヒントを与えてくれるはずです。

また次回の記事でより具体的な内容をお伝えいたします。

それではまた!

空飛ぶカメレオンを目指せ!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2023年 3月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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