ダ・ヴィンチはなぜ40歳で語学勉強を始めた?
ルネサンスの万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチは40歳を超えてから語学学習を始めました。ダ・ヴィンチが書き残したノートには、ラテン語の単語を書き連ねた箇所があり、勉強していたことが分かります。こちらがそのノートの1ページです。
面白いことに横顔のスケッチが入っています。単語を書くことに飽きて落書きをしたのか分かりませんが、ダ・ヴィンチのノートには、何の脈絡もなく突然関係のないものが書き込まれていることがよくあります。
ダ・ヴィンチが40歳になってから語学を勉強した理由は、一体何だったのでしょうか。
答えはズバリ新しい知識を手に入れるためです。
文人や学者などの知識人たちは、ラテン語で学んでいました。ダ・ヴィンチは日本でいう中学2年生の頃には、芸術家が集まる工房に弟子入りしてアートの技術と素養を学ぶことに専念していますので、十分に語学を学ぶ機会がありませんでした。
年齢を重ねるに連れて蔵書量が増えていったダ・ヴィンチにとって、イタリア語では出版されていない本にも興味を持ち、ラテン語を独学で学び始めました。
「語学を学び始めるのに遅いということはない」ということを、自身の姿で教えてくれています。
では、グローバル化時代に生きる私たちも、やはり語学を勉強すべきなのでしょうか?
語学は勉強すべきか否か
まず、「語学を学ぶこと自体が好きで趣味にしている」という方はぜひ学び続けられたらいいと思います。
学ぶことが楽しいのであれば、それはその人にとって有意義な時間となりますが、苦痛で仕方がなく、無理矢理取り組んでいる人は、本当に学ぶべきなのか見つめ直してみましょう。
イエール大学助教授の成田悠輔さんは、語学を学ぶべきか否か、『日曜日の初耳学』という番組でこのように言われていました。
「英語は本当にガチでやるか、全然やらないかのどちらかでいい。日本人の99%より翻訳機の方が上。自分の中身、伝えるべき内容を作る方に時間を使って、英語で伝える部分は翻訳に任せてしまう」
AIが発達していく中で、翻訳の精度はどんどん上がっていきます。そのうち、『ドラえもん』に出てきた道具「ほんやくこんにゃく」のように、自分が話す言葉が相手の言語に翻訳され、相手の話す言葉が自分の言語に瞬時に翻訳される時代になるはずです。
ただ、成田さんは「人間が伝えることでしか伝わらないものもある」ということにも触れていました。
WBCで初の日系メジャーリーガーとして注目されたヌートバー選手がチームメイトと円陣を組んだ際、最初は英語で話していてそれが通訳されていました。
そして、最後に日本語で「頑張ります! さぁ、いこう!」と呼びかけていた場面が何度もテレビに取り上げられていました。
あえて日本語で伝えることで、自分の感情が届き、多くのファンを作ることにもつながりました。そのため、もし自分で外国語を話せるのであれば、それはとても素敵なことだと思います。
外国語を学ぶ上で、もし語学留学をするのであれば、言語を学ぶ以上の価値があると成田さんは言います。
「凝り固まった自分の価値観を壊したり書き換えたりするみたいな意味がある」
海外という新天地で生活をすることは、日本では当たり前だった価値観が変わるきっかけを与えてくれるのです。
デキる人はみんな知っているすごい翻訳ツール
ネットの翻訳ツールと聞くと、Google翻訳を利用している人も多いかもしれません。
いろいろな翻訳ツールがある中で、ドイツが生んだ最先端のAI技術を駆使したDeepLというものがあります。
https://www.deepl.com/
DeepLは、本記事執筆現在、31言語に対応しており、無料版と有料版があります。公式サイトによると、英語⇄日本語の翻訳精度は競合の翻訳ツールに比べて6倍の差があるといいます。
実際に、Google翻訳と訳文を比較してみましょう。
例えば、「侘び寂び」と日本語で入力した場合、Google翻訳ではなんとwasabiと変換されてしまい、全く別の単語である「わさび」になってしまいます。
しかし、DeepLでは、単純にwabi-sabiと出るのではなく、
「aesthetic sense in Japanese art emphasising quiet simplicity and subdued refinement」
と、その単語の意味の解説まで出てくるのです。
翻訳の精度だけではなく、他にもいくつか優れた点があります。
その1つは、ファイル翻訳の機能です、
Word、PDF、PowerPointのファイルをアップロードするだけで翻訳をしてくれます。(無料版は数量制限があります)
また、スマホ版のアプリもあり、無料でダウンロードすることができます。アプリの特徴は、なんといっても画像読み取り機能がついていることです。
この機能を使って外国語の本を開いてアプリで読み取ると、瞬時に日本語訳が出てきます。他の翻訳アプリでも画像読み取りができるものがありますが、精度はDeepLが優れています。
ダ・ヴィンチはラテン語の本を読むために一生懸命語学の勉強をしたのですが、私たちは語学の知識がなくても、翻訳ツールを使うだけで外国語の本を読むことができるのです。
もちろん、本以外の旅行中に見かけた外国語の看板なども読み取り可能なので、とても便利です。
時代の恩恵を享受しよう
昔の人たちに比べると、私たちは大変恵まれています。恵まれすぎて、感覚が麻痺しているといっていいでしょう。
500年前のルネサンス時代では、本一冊購入するのに数十万円の費用がかかったといいます。翻訳ツールをうまく駆使すれば、日本語の情報だけではなく、世界中の知識を手に入れることができます。
翻訳ツールも高性能になったとはいえ、まだまだ発展途上の段階にあります。
今後、言語の壁が徐々になくなっていくにつれ、私たちがすべきことは成田さんが言うように伝える中身です。
やがて中途半端な実力の人は淘汰され、超一流の翻訳家だけが生き残る時代が来ます。本気で通訳や翻訳家を目指すつもりがなければ、自分は一体どんなことを世界に発信することができるのか、未来に備えて見つめ直すことも有意義な時間になるでしょう。
今回の記事でDeepLを初めて知った方は、ぜひ一度試してみてください。
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2023年 5月 公式掲載原稿
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)