ダ・ヴィンチが考えた、相手を信頼させる軍事戦略の提案方法
前回の記事では、レオナルド・ダ・ヴィンチの自薦状を通して、狙っている対象に採用される方法をご紹介しました。画家として知られるダ・ヴィンチですが、実は軍事技師として戦地にも赴いた経験を持っています。
その時の様子を、要約でご紹介します。ダ・ヴィンチは、戦乱の世の中に求められる軍事技師になるために転職を考えていました。そこで、敵国からの侵略を恐れ、自国の領土を拡大させたい統治者が喉から手が出るほど知りたい軍事的機密情報を提供しようとしたのです。
それは、難攻不落の城でも攻略できる方法であり、携帯式の橋や大砲、秘密の地下道の作り方、頑丈な戦車や船の製造に及んでいます。さらには平和時には、建築、土木、彫刻、絵画も提供できるとまで言っています。
ダ・ヴィンチは自分自身を軍事のエキスパートであると十分にPRし、敵地を攻略するためのすベてのノウハウがあると伝えていました。そうすることで、提案を受ける相手に対し、この人1人に任せたら大丈夫という信頼感を芽生えさせることができるからです。
相手に受け入れられるための方法は500年前のルネサンスの時代も、今も、そしてこれからも変わることがない普遍的なものです。このダ・ヴィンチの提案方法を、私たちの今の時代に当てはめてみたいと思います。
現代のオンラインセミナーにも、500年前のダ・ヴィンチの戦略が使われていた
コロナ禍が長期化する社会において、オンラインセミナーが日常的に行われています。数年前までは現地に行かなければ参加できないセミナーでも、今はオンラインのみだったり、リアルとオンライン併用のセミナーが当たり前になっています。
私はここ最近、いろんなオンラインセミナーに出て情報収集をしていたのですが、その中で今回は、あらゆるセミナーで入手した特典の効果についてまとめてみます。面白いことに、この特典の効果と先ほどのダ・ヴィンチの自薦状には、いくつかの共通点があるのです。
特典とは何かというと、辞書には「特定の人に与えられる特別の権利や待遇」と書かれていますが、オンラインセミナーにおいては「登録または参加した人だけがもらえる有益なプレゼント」となります。ちなみに、LINE公式アカウントに登録した時にもらえる特典はたいてい無料で、オンラインセミナーに参加した際には無料と有料の場合があります。
ダ・ヴィンチは自身を売り込む際に、10個の提案を盛り込んでいました。この複数の提案をしているということがまず重要です。なぜなら、もし1つしか提案していなかったら、それが相手の求めることに合致していなかった時点でスルーされてしまうからです。また、複数あるほうが、「これだけもらえるなら、この人にちょっとつきあってみようかな?」という心理が働きます。
そのため、特典を作成しプレゼントする場合も、多くの場合、「3大特典、もしくは5大特典をプレゼント」のように、複数用意されています。どれか1つでも興味を持ってもらえれば、登録率や参加率が高まりますから。ただし、特典の数だけ増やそうとするあまり、ターゲットがとてもじゃないけど関心を持たないような特典を混ぜ込んでしまうと、離れて行ってしまうため注意してください。
高額講座に誘導する場合は、ダ・ヴィンチのように10くらいの多めの特典が用意されている場合もあります。その際は、1つくらい変わり種を用意しても良いでしょう。ちょうどダ・ヴィンチが最後に「平和時にできる建築やアート」を提案したように。十分相手の要求を満たした上で、少し見方を変えた特典を入れると、特典全体がより魅力的にも見えることがあります。
特典は大きく4つに分類される。中にはずる賢いものも…
さて次に、どんな特典があるのかについて、私が実際に入手した特典をご紹介したいと思います。カテゴリー化すると、【情報系】【添削系】【体感系】【招待系】の4つに分類されます。
まず最初の【情報系】ですが、特典ではこれが一番主流です。私がこれまでに受け取った情報系は、あらかじめ録音された音声特典や動画特典。テンプレートやチェックシート、使えるアプリ集、専門分野に関するポイントをまとめたPDF特典などです。出版されている人は、電子書籍を丸ごとプレゼントしている人もいます。復習用にセミナーのスライドをプレゼントしている方もいましたが、これでしたら新たに何か用意する必要がないので手間が省けるかもしれません。
次に【添削系】ですが、主に文章やブランディングに関する専門家の場合、「SNSやブログなどのプロフィールを添削します」という特典をつけている方もいます。また、運気が上がる姓名診断を特典にしている方もいらっしゃるのですが、ある意味ずる賢い方法です。なぜかというと、たとえばLINE公式に登録を誘導しても登録者の本名がわからないのですが、姓名診断のために本名を知れる口実ができるからです。こうすることで、主催者は本名入りのリストがとれるわけです。
3つ目の【体感系】は何かというと、これはスピリチュアルに多いのですが、瞑想やヒーリング体験をしてもらうことを特典にしている場合です。実際にリアルで行う場合と、録画したものを送る場合などがあります。
最後の【招待系】は、【情報系】の次に多く、個別無料相談会やお茶会、特別セミナーへの参加券、Facebookの秘密のグループに招待するというものです。多くの場合、交流を深めて自身の講座に誘導することを目的にしています。
自分が主催者になった場合は、動画を入れるべし
いろいろな特典があることをご紹介しましたが、もしあなたが何か講座を開催する場合に、おすすめの特典は何かと聞かれると、最低1つは動画を入れることです。
なぜかというと、心理学でも「単純接触効果」といわれるように、会えば会うほどその人のことが好きになる可能性が高まる、いわゆるファン化につながりやすいためです。そして、実際のセミナーやリアルで会ったときに、相手は自分のことをすでに知ってくれているので、スムーズに物事が進みます。そのため、特典はすべて動画にしている方もいるくらいです。
とはいえ、文章ですぐに読みたいというニーズもあるので、バランスよく組み合わせてみるのがよいでしょう。自分が主催する内容によっても変わるため、ぜひやりやすい方法を考えてみてくださいね。
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2021年 11月 公式掲載原稿
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