レオナルド・ダ・ヴィンチが書き残したノートには、私たちの人生に役立つ様々な珠玉の言葉が書き残されており、あまり知られていない名言がたくさんあります。
今回は、『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』を参考に、レオナルド・ダ・ヴィンチの書き残した名言を紹介し、その後に解説を記載しました。
今後も随時、追記・更新していこうと思います。
より詳しい解説が気になる方は、『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』にありますのでお読みください。
平凡な自分を成長させ強くする名言
1 堂々と劣等感を持つ
この男(レオナルド・ダ・ヴィンチ)は大バカ者だ……言ってくれ、サンドロ、君はどう思う? 本当のことを正直に言おう。僕は成功しなかったのだ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P32(アトランティコ手稿)
システィーナ礼拝堂を装飾する壁画制作プロジェクトが企画され、フィレンツェからヴァチカンに指折りの画家が数人選定されました。技術力があったダ・ヴィンチは当然自分も選ばれると思っていましたが、はからずも落選したときの言葉です。しかし、落胆するだけでなく、現状を客観視する強さがありました。
2 自尊力がある者が勝つ
イルカは自分の背びれの刃がどれほどよく切れるか、ワニのお腹がどれほど柔らかいかを知っている。両者が闘うときイルカはワニの下に潜り込み、そのお腹を切ってワニを殺す。逃げる者や、怯えながら捕らえようとする者にとっては、ワニは恐ろしく、決して倒せない。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P34(パリ手稿H)
イルカにはイルカの闘い方があり、自分の強みを発揮さえすれば、恐ろしいワニをも倒すことができることを表現した寓話です。私たちは自分の強みを知っているだけでなく、自尊力(自分の尊厳を高める力)を高めることで、困難に遭遇しても乗り越えていけるのです。
3 欠点は無視して、裏側にある長所を伸ばせ
鉄は手入れをしないと錆びてしまう。水は放置されると腐り、冷え込むと凍る。同じように、才能も使わなければダメになってしまう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P36(アトランティコ手稿)
ダ・ヴィンチは自分の欠点の裏側にある長所を把握していました。その長所を伸ばすことで、多くの鑑賞者を魅了する作品を生み出し続けました。
4 勝者とは、始める人ではなく、続けた人のこと
石は、火切り鉄に叩かれたので、びっくりして声を荒らげて言った。「どうして私をいじめるの。人違いでしょう。私を苦しめないでくれる? 私は誰にも迷惑をかけてないのよ」。すると鉄が答えた。「我慢すれば、素晴らしい結果が生まれるはずさ」。石は機嫌を直してじっと苦痛に耐えていると、やがて素晴らしい火が生じた。その火の威力は、無限に役立つことになった。これは学習を始めたばかりの初心者が、自己を抑えて、地道に学びを続けた結果、偉大な成果を生み出すことにたとえられる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P38(アトランティコ手稿)
レオナルド・ダ・ヴィンチは生涯、地道に研鑽を続けた結果、偉大な業績を数多く残しました。今日ではそのノートと絵画は、共に世界最高額で落札されています。
5 けなされたら、喜べ
私が学者でないからと、私のことを学のない人間だと非難、批判する人たちがいる。バカな連中だよ。たしかに私は、彼らのように著作家たちの引用をすることはできない。だが、そのまた先生である「経験」に基づくほうがはるかに優れた価値がある。批評家たちは、他人の苦労の成果を利用しているだけ。それなのに、実際に経験し、創作している私を軽蔑するなら、彼らこそ非難されてもよさそうなものだ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P40(アトランティコ手稿)
ダ・ヴィンチは自分自身や自分の信じることを否定されたら、それを批判するという方法で、自尊心を高めていきました。野球のイチロー選手は、他人から批判されることが大好きだといいます。それはなぜかというと、批判してくるということはそれだけ自分に関心を持ってくれているからです。関心がなければ批判をすることもなく、単なる無関心で終わります。当たらない批判もありますが、自分が気づかない視点を教えてくれるチャンスでもあるのです。
6 評価されているものを批評してみる
背景の描写など研究しても仕方ないと言う人たちがいる。ボッティチェリも同じで「壁にスポンジを投げつけるだけで、壁に染みができる。その染みだって美しい風景だ」と背景を軽視する。だが、たとえその染みがアイディアを与えてくれても、その細部の仕上げについては不十分だ。ボッティチェリが描いた風景は、あまりにお粗末だった。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P42(ウルビーノ稿本)
名画『ヴィーナスの誕生』で知られる画家ボッティチェリ。ちょうどダ・ヴィンチの7歳上の先輩画家で、メディチ家にも厚遇されていました。そんなボッティチェリに対抗して言った言葉です。風景描写に強いこだわりを持っていたダ・ヴィンチは、批判を通して自分の意見を確立させています。批判は自分の主張がなければすることはできません。面と向かって言うと相手に不快な思いをさせるかもしれませんが、ダ・ヴィンチは人知れずノートに書いていました。批判をうまく善用していたのが、他ならぬダ・ヴィンチなのです。
7 パーフェクト・ロールモデルをもて
画家は、まず立派な師匠たちが手がけた絵に学び、まねをする習慣を身につけたほうがいい。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P44(アシュバーナム手稿)
ダ・ヴィンチより前に万能の天才がいたことをご存知でしょうか? 彼の名は、レオン・バッティスタ・アルベルティ。絵画、彫刻、建築、詩作、数学、演劇、音楽、運動とその活躍は多岐にわたり、まさにもう一人のダ・ヴィンチです。元祖万能の天才を手本とすることで、後世に名を残す存在になったのでした。
8 他人の長所を融合させて、コラージュ・ロールモデルをつくれ
架空の動物を描く場合、どうすればリアルに見せることができるか。それには、実在する動物に似せる必要がある。たとえばドラゴンを描きたいのなら、頭はマスティフ犬かポインター犬、眼は猫、耳はヤマアラシ、鼻は猟犬、眉はライオン、額は老いた雄鶏、首は亀を参考にすればよい。
引用:『『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P46(アシュバーナム手稿)
全面的に尊敬する人が見つからなかった場合は、別の方法があります。それは「コラージュ・モデル」。コラージュとは現代絵画の技法で、新聞や写真、布や針金などさまざまなものを貼りつけ、組合わせることをいいます。誰しも1つは優れたポイントがあります。「この人はここが素晴らしい」「あの人は言葉遣いが素敵!」「お世話になっている先輩はいつもおしゃれ♪」など、自分がいいなと思うポイントを組み合わせて理想の自分を作り上げるのです。
9 大きなリターンは、常に恐怖心の向こうにある
私は思いがけず巨大な洞窟の前にたどり着き、そこにしばらく呆然と立ちすくんでいた。腰を屈めて左手を腰に当て、ひそめた眉の上に右手をかざして洞窟の奥を透かして見た。だが、中は暗くて何もわからない。しばらくするうちに、突然、私の心の中に2つの感情、恐怖と願望が湧き起こってきた。不気味な暗い洞窟に対する恐怖と、その奥に何か不思議なものが潜んでいないか見届けたいという願望だ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P48(アランデル手稿)
ダ・ヴィンチがもともと住んでいたヴィンチ村は、自然が豊かなところで、ある洞窟がありました。得体の知れない洞窟に直面して、「恐怖」と「願望」が湧き起こってきたといいます。その「恐怖」に打ち勝って、洞窟を探索すると「クジラの化石」を発見することになりました。この洞窟での体験が、後に有名な作品を生み出す糧となったようです。
10 得意分野で余裕が出てから、不得意なことを補完する
学問もなしに実践に熱中する人は、舵も羅針盤も持たずに航海する船乗りと同じ。どこに向かっているのかまったくわかっていない。実際は常に正しい理論を踏まえて行うものだ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P50(パリ手稿G)
ダ・ヴィンチは自身の「経験」をベースにしつつ、「理論」で補強することによって、物事の真理へ到達したいと願っていました。実際、30代以降になると、読書量がかなり増加しています。
11 自分の仕事がナンバーワンと思え
自分を魅惑する美人を眺めたいと思うなら、画家はそれを生み出すことができる。また、もしあながた、恐ろしい怪物やおどけたピエロ、同情をする人を眺めたいと思うなら、画家はそれを創り出す主人であり神である。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P52(ウルビーノ稿本)
レオナルド・ダ・ヴィンチは「自分は神=何でも創り出せる存在」と思うことで、自分の仕事にホコリを持ち、自由な想像力を発揮することができました。自分を神と同一視することで、自尊力を高めたのです。
12 自分の望みを叶えたければ、まず相手の望みを叶えよ
私には、兵器を発明する秘密の技術があります。もし私を採用していただければ、いつでもその効果をお見せしましょう。平和な時代には、建物や運河の建設において立派な仕事をし、他のいかなる人にもひけをとらないと確信をしております。また、彫刻や絵画は他の誰よりもうまく描けます。青銅の馬の制作もできます。一族の不滅の栄光と永遠の名誉を記念するためであります。以上、列挙したどれかが不可能で実行できないと思われるならば、どんな場所でも試す用意があります。謹んで、以上の通り、推薦するものであります。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P54(アトランティコ手稿)
これはレオナルド・ダ・ヴィンチが、軍事技師の採用を目指して自分を売り込んだ自薦状です。当時は戦乱の世だったので、時代に必要な仕事は軍事関連であると気づき、今でいう転職を考えました。なぜ絵を描く仕事ではなかったのか?今より名の知れた画家として大作を描くためには、パトロンが求めている軍事関連の仕事に就くことが先決であると判断したからです。まずクライアントの望みを叶え、自分が本当にやりたい絵を描くことにしたのです。
変化と行動を促し勝負強くさせる名言
13 没頭のみが輝かしい未来を開く
どんな障害も私を妨げることはできない。あらゆる障害は、ひたすら取り組むことで打破される。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P64(ウィンザー紙葉)
ダ・ヴィンチは、騎馬像の設計にあたって馬をひたすら描きました。正面や横、ナナメ、真後ろから見たおしりなどを描き、馬体の比率を詳細に確認しながら、没頭して描き続けました。これによって人々を感動させる騎馬像を設計したのです。騎馬像制作以外も、自分がやりたいことに没頭した軌跡がノートに記されています。
14 ふつうのことに疑問を持つ
ハエが音を出すのは羽が原因だ。それは、羽を少し切ってみるか、わずかに飛べる程度に羽に少々蜜を塗ってみればわかる。そうすると、羽ばたく際の音はかすれ、羽の障害の程度に応じて、その音が鋭い音から低い音へとかわっていくから。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P66(解剖手稿)
ハエの「ブーン」という音自体に疑問を持つ人はあまりいないでしょう。しかし、ダ・ヴィンチは、ハエが発する音に疑問を抱きました。そして観察と実験によって、この音は羽根から出ていることを発見。皆が当たり前に思っていることを疑い、関心を持つことで新たな視界が開けるのです。
15 なぜを5回以上重ねろ
なぜ水は流れるのか、なぜその運動は終わるのか。そして、なぜ遅くなったり速くなったりするのかを説明してみよう。さらに、なぜ水は自分より低い空気と境を接すると、常に下降するのか。なぜ水は太陽熱によって空気中に上昇し、やがて雨となって再び落下するのか。また、なぜ水は山々の頂から湧き出すのか。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P68(パリ手稿E)
ダ・ヴィンチ研究の権威であるケネス・クラークは、ダ・ヴィンチについて、「歴史上、最も強烈な好奇心を持った男」と評価しています。人間に好奇心を持ったダ・ヴィンチは、「呼吸の原因、心臓が動く原因、嘔吐の原因、胃から植物が下がっていく原因、腸が空になる原因、咳をする原因、あくびする原因、くしゃみする原因、手足がしびれる原因、、、」と、好奇心のおもむくままに、疑問の解消に没頭し続けました。
16 好きなことしか、身につかない
食欲がない状態で無理に食べると健康を損なうように、願望のない学習では覚えられず、学んだことも定着しない。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P70(アシュパーナム手稿)
成功するためのアドバイスとして、ダ・ヴィンチは「本当に学びたいことを見つけ、それに打ち込みなさい」と言っています。自分がしたいことを能動的に、貪欲に学ぶことで効率的に吸収でき、高い成果を上げることができるのです。
17 やると決めたら1ミリも残さずやり切る
解剖をするときは、頭から始めて足の裏で終われ。骨の関節をすべて外して、骨と骨とを離せ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P72(解剖手稿)
自身の人並みはずれた解剖への熱意について、ダ・ヴィンチはこうも書き残しています。
いくらあなたが情熱的に取り組みたくても、胃が吐き気をもよおすかもしれないね。そうならなかったとして、皮膚を剥がされた八つ裂きの死体とひと晩過ごす恐怖を乗り越えなくてはならない。怖くなくても、図示するための描写力は別問題だ。デッサンの能力だけではダメで、遠近法の知識もいる。それがあったとしても、幾何学的な証明法や、筋肉の働きや強さの計算方法を知らないかもしれない。最後に、それを繰り返す忍耐力が必要。私が満足な研究を成し得たかは、研究ノートで判断してくれればいい。もし不完全だとすれば、それは怠慢のせいではなく、ただ時間が足りなかったのだと言い切れる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P73(解剖手稿)
ダ・ヴィンチが恐れていたのは研究が中途半端になることだけであり、やり切ってこそ他者より抜きん出ることができます。そして、自分がやり切ったかどうかを知っているのは、あなた自身だけなのです。
18 質素に才能を育め
質素な暮らしは素晴らしい才能を着実に育み、豪華な暮らしはその芽を摘んでしまう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P74(アシュバーナム手稿)
資金力が十分にあって、最高の環境が整っていさえすれば、才能が育つというわけではありません。資金があれば、自己を磨かず欲に流され、気がつけば才能が育っていないことも。自己に集中できる質素な暮らしに身を置いて、目標達成に向けて着実に努力することが大切です。
19 先人を超えるのは人間の使命
アルベルティが考えた船のスピードを測る方法は、いつも同じ船でなければうまくいかない。その積み荷や帆の位置、波の大きさも同じでなければならない。だが、私の方法はどんな船にも常に使える。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P76(パリ手稿G)
ダ・ヴィンチの絵画の師匠は、当代随一の工房を構えていたヴェロッキオという芸術家でした。やがてダ・ヴィンチが才能を開花させると、見事な描写力に圧倒され、それ以降、筆をとるのをやめたといわれています。
20 たとえ夢を叶えられなくても、得られるものがある。
巨大な鳥は、偉大なチェチェロ山の峰から初めて飛び立つ。そして、全世界は、驚嘆の声をあげ、あらゆる書物はその名声で一杯になるだろう。それが生まれた巣に不滅の名誉がもたらされますように。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P78(鳥の飛翔に関する手稿)
人類で初めて飛行を成功させたライト兄弟より400年早く、レオナルド・ダ・ヴィンチは飛行へ挑戦し、どうしたら人間も空を飛べるのかを思案しました。鳥やコウモリ、昆虫などあらゆる飛行物体を観察し、実験につぐ実験。「ハンググライダー」や「はね車」など斬新な飛行方法を考案しましたが、当時は成功にいたりませんでした。しかしそれらは「力学」を理解するのに大変役立ち、レオナルド・ダ・ヴィンチの今後の活動に大変役立ちました。
21 気がのったときに打ち込めばいい
時々仕事を離れて、少しは他の気晴らしをしてみるといい。仕事に戻ったとき、あなたはより優れた着想を持つことができるであろう。仕事に打ち込んでいると、あなたは周囲がまったく見えなくなるからだ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P80(アシュバーナム手稿)
ダ・ヴィンチは、早朝から絵を描き始めて夜明けから日没まで一度も絵筆をおかず、飲み食いを忘れて描き続けることもあれば、2、3日、あるいは4日と全く筆を手に取らず、数時間腕組みして立ちつくしたり、絵を描きに来たかと思えば、一筆二筆描くと、また去っていくことがあったといいます。偉大な作品を残すのにも、常に没頭し続ければいいのではなく、緩急が大事になってくるのです。
本質を見抜くための名言
22 目に見えない部分を見抜くには、やり方がある
よく考えない人は、誤ることが多い。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P88(パリ手稿H)
水流をタネの動きで把握する実験(アトランティコ手稿)
情報があふれ続ける現代社会で、いったいどの情報が信頼できるのかを見極める必要があります。選択するためには熟考することが大切です。見えない部分を見える化し、常に疑問を持ち、質問し、目で確認し、比較検討するなど、「自らの働きかけ」が大切です。
23 まず終わりから入れ
よくよく終わりを考えよ。終わる前に気を配れ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P90(パリ手稿H)
教皇レオ10世から絵を描くように依頼を受けた際、ダ・ヴィンチは、まず仕上げ用のニスから作り始めました。過程がどうなるかわからなくても、仕上げのイメージやゴールを見つめてみると、自ずとその過程が見えてくるものです。
24 死を念頭において生きろ
「生」について学ぶつもりだったのに、「死」を学んでいるのだろうか。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P92(アトランティコ手稿)
「もし今日が人生最後の日だったら、僕は今からすることをしたいと思うだろうか?」これはスティーブ・ジョブズが毎日自分に問いかけていた有名な質問です。死ぬ時に満足できるのか? 後悔しない人生とは何か? と死を見つめた時に本当になすべきことが見え、生を充実させるきっかけにつながるのです。
25 何事も比較して考える癖をつける
玉ねぎを中心から半分に切ると、その玉ねぎの中心の周りに同心円をなす皮の層が見える。同じように、もし人間の頭を半分に切るなら、まず頭髪をすべて切り落とし、それから頭皮、頭筋、頭蓋骨膜、頭蓋骨が見える。さらに内部では、脳硬膜、脳軟膜、脳、最後は土台となっている骨を切ることになるだろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P94(解剖手稿)
1つのものさしでだけでは、長いか短いか考えることができなくても、2つのものさしを比較すれば、長いか短いか、答えが出せます。ダ・ヴィンチは、異常なほどに比較癖があり、ここでは「たまねぎ」と「人間の頭」を比較し、他にも「人体」と「地球」を比較して、考えることなどもありました。さまざまなものと比較することで見えてくるものがあります。
26 海外の人と知恵を交換せよ
異なる半球に別れ住む人々に告ぐ。お互いの言語を理解し、一緒に語り合い、抱擁し合うように。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P96(アトランティコ手稿)
イスパニア人、スキティア人、アラビア人、アッシリア人、エウボエア人、エジプト人など、多くの人種とダ・ヴィンチは交流がありました。海外の人と触れ合うことで、自分の文化や生活の常識にとらわれず、新しい視座が手に入るのです。
27 言説を信じるな、現地を当たれ
ノアの時代に襲来した大洪水は、普遍的なものであったかどうかという疑惑。複数の理由によって否定せざるを得ない。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P98(アトランティコ手稿)
山頂で海の化石が見つかる理由は、「ノアの大洪水のときに海の生物が山頂まで押し上げられて残ったから」という聖書説が18世紀まで支配的に認められてきました。しかし、ダ・ヴィンチは、地質学的調査によって16世紀初頭に聖書説は誤りであると論破していたのです。
28 本物は「科学の目」で見極めろ
ニセの科学である手相学について、私は長々と話すつもりはない。なぜなら、そこに真実はないからだ。ただの空想の産物であり、科学的根拠がない。顔の特徴については、ある程度、人々の性格の良し悪しを表しているというのは確かだ。だが、手に関しては違う。大勢の軍隊が刀で殺されたとき、どの手相もバラバラに異なるだろうし、それを船が難破した場合でも同じだ。(中略)愚かな人々を相手に占いで食っている星占術師よ、私を許してくれ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P100(ウルビーノ稿本)
今もなお手相占いは1兆円市場と言われ、日本でも流行していますが、500年前のルネサンス時代であればなおさら流行っていたと想像できます。その中で1人、ニセの科学だと断定するダ・ヴィンチの「科学の目」は、当時から冴えわたっていたのでしょう。
29 流行に流されないスタイルを1つ持て
私が子供の頃、身分の高い人から低い人まであらゆる人が、頭はもちろん、足から腰にいたるまで、鶏のとさかのような縁飾りをつけているのを見た記憶がある。あるときは服を長くすることが流行って、裾を踏まないように常に両手で持っていなければいけなくなった。と思うと今度は、極端に小さな服が流行り、窮屈過ぎて服が破れる。さらに細長過ぎる靴を履いては、靴の中で足の指を折り重ね、まめだらけにしている。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P102(ウルビーノ稿本)
流行に流される人たちを皮肉った言葉です。成功者の話に共通して出てくるのは徹底したこだわり。そのこだわりがトレードマークになると、自尊心も育まれるのです。
30 悩んだら、 自問自答して問題点を「見える化」せよ
かわいそうに、レオナルドよ。なぜお前はこんなに苦しむのか。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P104(アトランティコ手稿)
人生は順調なときばかりではありません。物事がうまくいかない原因がわからないとき、ダ・ヴィンチはどうしていたのでしょうか? それは徹底した自問自答です。世間でも「質問行動効果」といわれるものがあります。自分に質問をすることで、行動力が増すことがわかっています。
創造力を強化する名言
31 「イノベーション」ではなく「リノベーション」で生み出せ
人はみな、我流で制作しては、 自分は描くのが上手だと思っている。このような欠点は、 自然の作品から一切教えを受けずに制作し、作品をたくさんつくることだけを考えている人たちに見られる。 画家は自分自身と対話しながら、 自分の見ているすべてのものを熟考し、 そこから最も卓越した部分を選ばなければならない。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P114(ウルビーノ稿本)
「0から1」、無から有を生み出すイノベーションに対し、リノベーションは既存のものを改良し、「1を2、あるいは3にも5にもすること」をいいます。日本人はイノベーションよりもリノベーションが得意な民族と言われます。前例を改良し、洗練したものを生み出すことができるのです。
32 「対極のもの」がインパクトを生む
物語を描く絵では、 対比の効果を演出するために、正反対の両者を一緒にしておくといい。 つまり、醜い人と美しい人、大きい人と小さい人、 老人と若者、 強い人と弱い人などが、互いに近いところにいればいるほど、 そのコントラストは大きくなる。 だから、できるだけ異なる者どうしをくっつけておくといい。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P116(ウルビーノ稿本)
老人と若者 ウフィッツィ美術館
コメント:青年と老人、自然と人工物、抽象と具象、赤と緑など対極にあるものの組み合わせは、大きな吸引力を生み出します。インパクトを与える必要がある際には、積極的に対極的なものを意識してみましょう。
33 異種コラボが日常を打開する
敵の地下道の位置を知りたければ、 穴が作られていると疑われる場所すべてにタイコを置け。 次にタイコの上に1組のサイコロを置け。 君が穴の掘られている所の近くにいるとすれば、敵が掘り進める度に、 サイコロはタイコの上で若干はね上がるだろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P118(アシュバーナム手稿)
タイコとサイコロはダ・ヴィンチが発明したものではありません。日常に存在し、誰もが知っているものです。ダ・ヴィンチは、見たこともないような革新的なこともそうですが、「異種コラボ」に面白みを感じていました。無関係と思われるものどうしの組み合わせは、時に強力なコンテンツを生み出すのです。
34 あえて矛盾する言動をせよ
呼吸を止めずに、 どうすれば水中にとどまることができるか。 その方法については記さずにおく。 公表しない理由は、邪悪な人間たちが、 海底における殺人に利用するかもしれないからだ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P120(レスター手稿)
ダ・ヴィンチは、戦争を批判しながら兵器の開発をしました。経験が大事と言ったり学問が大事と言ったり、矛盾する言動が多数書き残されています。自分の考えを固定させずに、別の視点から物ごとを見たり、考えたりできる柔軟さが、彼の創造性を生み出す源泉となっているのです。
35 型にはめず、多様性にこだわれ
人体というものは、均整がとれていたり、太って背が低かったり、痩せて背が高かったり、 中肉中背のような場合もある。それなのに、このような多様性に留意しない画家は、 人物像をいつも型通りに描くので、すべての人が兄弟のように見えてしまう。 これは大きな非難に値する。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P122(ウルビーノ稿本)
型通りの作品を生み出したり、毎日決められた通りに動くことは楽かもしれません。しかし全く同じ作品をつくっていたら成長はできませんし、これまでの作品との違いがわかりません。日常も毎日同じように見えて、創意工夫でいくらでも改善することができ、毎日に変化が生まれます。型にはまらない多様性を身につけましょう。
36 ユーモアがあれば、辛いときも乗り越えられる
ある画家が、 次のような質問をされた。 君は静物の形はそれなりに美しく描けるのに、 どうして子供たちはとても醜くなってしまうのかね、と。 すると画家は言った。 「絵画は昼間制作するが、 子供は夜つくるのでね」 と。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P124(バリ手稿M)
修行や練習、勉強、毎日やるのは苦痛かもしれません。しかし、その一つ一つにユーモアが紛れていれば、どうでしょうか? ちょっとだけ楽になって、もうちょっとだけ頑張ろうと思えませんか? ユーモアのセンスは、自分自身をも救う武器なのです。
37 ミステリーを残せ
立派な作品、それによって将来の人々に、私が◯◯◯であったことを証明することができるだろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P126(アトランティコ手稿)
ダ・ヴィンチの作品にはさまざまな謎が見え隠れします。秘密やミステリーを紛れ込ませることで、人々の関心を強くひきつけるのです。
38 徹底的にリアルであれ
人物像において心情を表現する動作は、心の動きに完全にマッチしているように描き、 その動作に大きな愛着心と熱意が表れていなければならない。 さもないと、 その人物像は一度ならず二度死んでいる、 と言われるから。 つまり、 その人物は絵空事であるから一度死んでおり、 それが心の動きも体の動きも示していなければ、二度目の死を迎えることになる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P128(ウルビーノ稿本)
心の動きは目に見えないため軽視しがちですが、ダ・ヴィンチは心に抱く想いを人物画に込めました。作品を作る際に、キャラクターの設定をしっかりと決めておくことで、作品にリアリティが生まれます。目に見えないところこそ大事なのです。
39 才能は、 カオスの中で目覚める
才能を目覚めさせて、発想を得るのにとても有益な方法がある。それは、さまざまな染みのついた壁や、いろいろな混合物からなる岩石を眺めることだ。 もし何らかの情景をイメージしなければならないとき、 あなたはそこに、さまざまな風景や戦闘場面、人の動き、奇妙な顔や服装など、無数のものを発見するだろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P130(ウルビーノ稿本)
コメント:新しい発想を得るときには、まったく別のことを始めてみるといいかもしれません。意図的に未知の物に触れることで発想が変わり、局面を打開するヒントが生まれるかもしれません。
40 まず映像を頭に浮かべて、それについて話せ
嵐、つまり海のシケが迫っていて、 大気が暗い雲に覆われるのが見える。 そこでは雨と風が混じり合い、激しい稲妻がくねくねと蛇行しながら走っている。 樹木は地面にまで押し曲げられ、 傾いた枝に目をやれば葉が裏側を見せている。樹木はまるで恐ろしい暴風の凄まじさに驚いて、 自分の場所から逃げ出そうとしているかのようだ。 動物たちは恐怖から統制を失って、 浜辺のさまざまな場所を全速力で駆け回る。雲の膨らみの中で発生した雷は、凶暴な稲妻を放ち続け、 その光は、暗い野外のそこかしこを照らし出す。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P132(ウルビーノ稿本)
ダ・ヴィンチの説明によって、鮮明に状況が思い浮かべられます。まるで小説を書いているかのようです。まず説明する前に映像を思い浮かべ、相手にその映像が伝わるように話してみましょう。説明が具体的になるほど、映像コミュニケーションによって相手に自分の意図が伝わりやすくなります。
41 日常を非日常化する工夫をせよ
私たちのあらゆる認識は、感受性で決まる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P134(トリヴルツィオ手稿)
同じ物事を眺めても、人によって受け取り方が異なります。何も感じない人もいれば、感動する人、深く考える人もいます。毎日の生活を送る中で、今日も昨日と同じ日になるのか、全然違う日になるかは、まったくあなた次第です。日常を非日常にすることも、工夫次第でいくらでもできるはずです。
孤独と対人関係を考えるための名言
42 孤独が才能を育てる
才能を育てるためには、 あなたは孤独でいるほうがいい。 特に考えに集中しているときはなおさら。 考察したものを常にイメージすることによって、しっかりと記憶できるから。もしあなたが1人なら、あなたのすべてがあなたのものだ。ところがたった1人でも連れがいれば、あなたは半分になる。付き合いが増えるだけ、あなたは何もできなくなる。 つまり、もしあなたが大勢の人と一緒にいればいるほど、 不自由な人生を送ることになるよ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P144(パリ手稿A)
自分が本当にやりたいこと、やるべきことをするためには、自分だけの時間が必要になります。他人との人付き合いに振り回されて、自分が成長するチャンスを失っていませんか? 一度振り返ってみてくださいね。
43 仲間を選べ
あなたが親交を望むときは、その人の学習態度を見て選択するといい。あなたにいろいろなことを考えさせる関係は実りが多い。その他の親交はどれも有害となろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P146(アシュバーナム手稿)
5人の男 ウィンザー紙葉
コメント:ダ・ヴィンチが人を選ぶときの選定基準は、その人の「学習態度」でした。自分が成長したい時、周囲の人によって自分の成長速度は遅くもなり、早くもなります。当然、学習態度の良い人に囲まれたほうが自己成長につながります。
44 他人は変えられない。期待するな
1508年10月… 日、 私は30スクードもらった。 そのうち13スクードは、サライの姉妹の持参金を払うために彼に貸し、私に残ったのは 17 スクードであった。 今度は二度と貸すべきじゃない。 貸したなら、 返してもらうことはないだろう。 返してもらったとしても、 早くではないだろう。 早かったとしても、全額ではないだろう。 全額だったとしても、あなたは友を失うだろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P148(パリ手稿F)
レオナルド・ダ・ヴィンチには、20年以上ダ・ヴィンチにお供した「サライ」という弟子がいました。盗みをしたり、嘘をついたり、強情で大食らいの問題児でした。サライに対してコメントを書き残しています。「サライ、私は休みたいんだ。だからもう争いはやめにしよう。これ以上の争いはなしだ。私が降参するから」。他人を変えることはできないのだから、他人に期待をしないほうが賢明なのです。
45 謙虚な姿勢が幸せをもたらす
自分の美しさに自惚れた杉の木は、周囲の草木を邪険に扱うようになり、前から立ち退かせた。望み通り遮るものは何もなくなった。 だが強風が吹くと、 杉は根こそぎ地面に倒れてしまった。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P150(アトランティコ手稿)
自分自身に自信をつけたとしても、自惚れてしまっては大変なことになります。成功しても自分を戒める謙虚な姿勢でいられる人が、幸せを手に入れられるのでしょう。
46 忠告が必要な人ほど、忠告を拒む
他人の意見には、忍耐強く、 誠心誠意、 耳を傾けなければならない。 そして、 その批判者にあなたを批判する根拠があるかどうかをよく考えて、 十分に反省すること。 もしその批判が当たっていると思うなら、 自分の間違いを修正する。当たっていないと思うなら、 わからなかった振りをするか、その人に筋道を通して論理的に説明しよう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P152(アシュバーナム手稿)
悪意が向けられ、憂さ晴らしのために言葉をぶつけられることもありますが、善意によって厳しい言葉をかけられることもあります。よく相手の言葉に耳を傾けて、自分の間違いがわかれば、反省のチャンスとしましょう。
47 縦人脈を築け
私の最も親しい友人である建築技術総監督レオナルド・ダ・ヴィンチのために、あらゆる地域の自由通行と、 彼に対する好意的な接待を命ずる。 私から、 公国内の全城塞の視察の任務を課せられた彼には、任務を遂行するのに必要なあらゆる助力が十分に与えられねばならない。 さらに、領内のすべての技術者たちは、レオナルド・ダ・ヴィンチ総監督と協議し、彼の指示に従うことを命ずる。 私からの激しい怒りを被りたくない者は、この命令に反しないこと。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P154(チェーザレ・ボルジアの通行許可証)
人脈づくりには2種類あります。「横人脈」と「縦人脈」です。「横人脈」は自分と同程度くらいの人とのつながり。「縦人脈」は、自分より先のステージを進んでいる人との人脈です。自分の成長のためには、「縦人脈」を意識してお付き合いすることです。想像もしないチャンスを与えてくれるかもしれません。
48 意外な人ほど、いい先生になる
私は聾唖者を画家の教師にしている。 「その人にできもしない芸術のことを教えさせるとはな」 などと、 私を笑わないでほしい。というのは、その人は、他のすべての人が言葉で教えてくれるよりも上手に、 身振りであなたに教えてくれるからだ。 この私の忠告を軽蔑しないでほしい。 彼らは身振りの達人だ。 人が言葉と手の動きを連動させているときに、その人が何を話しているのかを、遠くにいながら理解できるほどに。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P156(ウルビーノ稿本)
レオナルド・ダ・ヴィンチはフラットな姿勢で人と付き合いました。身分の上下を問わず、自分にはない能力のある人を尊敬していました。そして、その優れたところを自分の分野に取り入れられないかを検討したのです。障害のある方を見てかわいそうと思うのではなく、自分にはない強みを発見して学ぼうとしたダ・ヴィンチには恐れ入ります。
49 会話では共感だけを意識せよ
人の話を聞く以外の方法で、 その人が何を好んでいるかを知ろうと思うなら、いろいろと話題を変えて話すといい。 その人があくびをしたり、嫌な顔をせず、じっと注目しているのであれば、間違いなくそれこそが相手の好む話題だ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P158(パリ手稿G)
人間関係が深まるかどうかの最大のポイントは、共感。人生は、共感を求めてひたすら旅をしているようなものです。人は自分を理解してくれる人を好きになり、反対にわかってくれない、自分に興味を示してくれない人は遠ざけようとします。共感を得るには相手の好きなことに興味を持ちましょう。
50 いつでも予想を超えた演出を心掛けよ
画家は、人々をその作品に引き付け、大きな感動と喜びで彼らを釘付けにするような作品をつくるように励まなくてはならない。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P160(ウルビーノ手稿)
「驚嘆コミュニケーション」も相手との人間関係が深まる重要なコミュニケーションです。ダ・ヴィンチは数々のサプライズを仕掛けながら、多くの人を魅了し、人間関係を深めていきました。サプライズはまさにダ・ヴィンチの趣味、もっというとライフワークでした。
51 自由人に学んでブルーオーシャンを目指せ
カメレオン―この生き物は、常に周囲の物の色に変色する。 だから、 しばしば象によって葉と一緒に呑み込まれてしまう。
カメレオン―この生き物は、 空気を食べて生きており、空中ではあらゆる鳥に襲われる。 そこで安全地帯を求めて雲の上まで飛んで行き、 自分を追いかけてくる鳥が耐えられないほどの薄い空気に到達する。 このような高みでは、天賦の才がある者しか生きていけないから、 カメレオンはそこに飛んでいくのだ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P162(パリ手稿H)
「一般的なカメレオン」と「常識破りのカメレオン」。レオナルド・ダ・ヴィンチは2つのカメレオンを紹介しています。前者は普通のカメレオンですが、後者は空想上のカメレオン。きっと、他人が追随できない境地を目指す生き方を示しているのでしょう。
52 分業がクオリティを上げる
ペンは、ペンナイフの必要な仲間であり、お互いに有益な仲間である。一方を欠いた他方は、ほとんど存在意義を失う。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P164(パリ手稿L)
ダ・ヴィンチは、よく共同作業者と仕事をし、役割分担をして弟子にも絵を描かせていました。下書きは弟子に描かせ、自分が着色をしたり、部分的には弟子が描いて、重要な箇所は自分が描くという分業をしていました。分業は仕事のクオリティを高める秘訣なのです。
知識を行動に変換し実行するための名言
53 メモ魔になれ
遠近法をしっかりと学び、事物の細部や形を記憶したら、気晴らしにぶらりと散歩にでかけよう。そして、人々が話したり、言い争いをしたり、笑ったり、とっくみあいのけんかをしたりする様子や仕草に注意を凝らし、その人たちの動作や周囲にいる人たち、つまり仲裁に入ったり傍観したりしている人たちがどのような動作をしているかもよく観察しなければならない。小さな手帳をいつでも携えておき、それらを簡略に描きとめておくこと。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P176(アシュバーナム手稿)
ダ・ヴィンチの日常的な姿は『メモ魔』です。天才であっても、すべてのことを記憶できないし、天才ほどその事実を認識しているのです。メモに書き溜めておくことで重要なひらめきを保存し、アウトプットの材料がそろっていくのです。
54 できるだけ細かく分類しておくと、後でラクになる
横顔の鼻には、10の種類がある。すなわち、真直ぐな鼻、凹状の鼻、凸状の鼻、中央から上が突出した鼻、中央から下が突出した鼻、鷲鼻、平らな鼻、低い鼻、丸い団子鼻、尖った鼻。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P178(アシュバーナム手稿)
絵を描く際には、様々なパーツのパターンを知っていることで、素早く描くことができます。作業や問題解決の際にもいろいろなパターンを想定して準備することで、スムーズにものごとに対応することができるようになります。
55 名著を読め
名著に親しもう。死者たちの言葉に耳を貸せば、幸せになれるよ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P180(パリ手稿Ⅰ)
ダ・ヴィンチはイルカやカメレオンなど動物に関連した言葉を残しています。この時に参照にしていた本がかの有名な「イソップ童話」でした。イソップ童話には人生を考えさせる内容が多くあります。ダ・ヴィンチはさらに自分でも寓話を作り、より良い人生を生きるための指針を投げかけています。
56 寝る前のゴールデンタイムを使う
私自身ですでに証明済みのことだが、夜ベッドに横たわるとき、 想像力を働かせて、 以前に学習したことや、熟慮して考えた特筆すべきことを思い返すことは、少なからず有益だ。これこそ記憶に残すための実践であり、役立つ方法である。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P182(アシュバーナム手稿)
就寝前1〜2時間は、きわめて学習効果の高い「記憶のゴールデンタイム」であると言われることもあります。レオナルド・ダ・ヴィンチはただ天才だからうまくいったのではなく、寝る前にも学んだことを思い出すという学習を自らやっていたことがわかります。皆さんは寝る前に、何を考えていますか???
57 その道の専門家に会い、最高の知恵を学べ
新しい研究をしたが、特記事項はない。それであなたは、この私に何を教えてくれるのか。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P184(トリヴルツィオ手稿)
ダ・ヴィンチは、様々な人に会いに行き、あらゆる学問について教えを請うていました。こうすることで、独学よりも学習スピードが何倍も早くなるのです。
58 機会があったら、とにかくやってみる
幸運にめぐり合ったら、ためらわず前髪をつかめ、後ろは禿げているからね。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P186(アトランティコ手稿)
幸運は流れ星みたいなもので、頻繁にやってくるものではありません。来てほしいときに来なくて、来てほしくないときに来たりする。「後ろは禿げている」というダ・ヴィンチの言葉通り、一度つかみ損ねると、二度とめぐって来ないチャンスもあります。チャンスをつかみましょう!
59 2冊のノートを使い分けろ
細部は、それが属する部分に一致し、さらにその部分は全体に一致しなければならない。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P188(アシュバーナム手稿)
ダ・ヴィンチが書き残したノートに「マドリッド手稿」があります。ⅠとⅡに分かれていますが、Ⅰは他の手稿からの浄書で、Ⅱは雑多なことが書かれたメモとして使い分けられています。インプットとアウトプットのノートを分けていたのでしょう。
60 視覚は文字を圧倒する
結果を簡単に伝えられる科学ほど役に立つものはなく、 反対に、伝わりにくいものほどムダだ。 絵画はその結果を、 世界中のすべての世代の人たちに伝えることができる。 絵画は、文字の場合のように、 さまざまな言語の通訳を必要としないため、瞬時に人類を満足させてくれる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P190(ウルビーノ稿本)
ダ・ヴィンチが考えをアウトプットするときに最も心がけていたことが「視覚化」です。文字で伝えることに比べ、絵や図で伝えることはその何倍も良いと考えていました。伝わるスピードやインパクトが段違いだからです。
61 人に伝えたとき、知識は本当に自分のものになる。
教えないのは、自分の儲けが奪われるのを恐れる人であり、儲けを大事にする人は、研究を捨てた人だ。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P192(ウルビーノ稿本)
人の何倍もインプットをしたダ・ヴィンチですが、ずば抜けていたのはアウトプットの量でした。偉くなっても多くの人から学び続け、学んだことを自分だけの手柄とせず、人に還元していたのです。
62 自らサロンをつくり、熱く語れ
寝坊したそこのあなた、 眠りとは何かな? 眠っている状態は、死んでいるのに似ているね。 それでは、なぜあなたは、その忌まわしい死人のような惰眠を貪るのをやめて、死後に生きた証を残すことをしないのか?
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P194(アトランティコ手稿)
ダ・ヴィンチはメモにアウトプットするだけでなく、自らが主催する知的サークル「レオナルド・ダ・ヴィンチ・アカデミー」を創設しました。いろいろな有識者たちと自由に交流を深め、知識を共有しました。
幸福についてのダ・ヴィンチの名言
63 人を愛するにはコツがある
最高の愛は、愛する人への深い認識から生まれるものだ。 もしあなたが相手を認識していないのなら、 大方、 いや、 まったく愛することができないだろう。 また、 もしあなたが愛する理由が自分の欲望を満たすためで、 美徳のためでないとすれば、あなたは犬と同じことをしている。 犬は骨をくれるかもしれない人に向かって後ろ脚で立ち上がり、 尻尾を振って歓迎するものだから。 でも、 もしその犬がその人の美徳を知ることができて、 その美徳を好ましいと思ったとすれば、その犬だってはるかに強くその人を愛するだろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P208(ウルビーノ稿本)
ダ・ヴィンチは孤高の天才なのかというと実はそうではなく、とても愛情深い人でした。それは弟子のメルツィの手紙などを見てもわかります。ダ・ヴィンチにとって「愛」は人生のキーワードでした。
64 怒りは幸せを台無しにする
人を怒らせる人間は、自分自身も破滅させる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P210(パリ手稿M)
怒りっぽい人は、脳卒中のリスクも高いという研究結果も報告されています。怒りは人を傷つけるだけでなく、自分自身を破壊させることは、実感のある人も多いのではないでしょうか。冷静に、怒りへの上手な対処法を見つけましょう。
65 嫉妬は幸運がやってくる場所で待ち伏せして襲撃する
よい行いで立派な成果を実らせても、叩かれて打ち落とされるクルミのように、有名になる傑作を完成させても、嫉妬のためにあの手この手で叩かれる人たちがいる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P212(パリ手稿G)
ダ・ヴィンチは、人体の神秘を解明しようと人体解剖に夢中になっていると、「黒魔術をやっている」と批判され、解剖を中断せざるを得なくなりました。今日でも、好き嫌いや嫉妬の感情で、事実無根のことをSNS上に投稿されることは日常茶飯事です。幸福なときこそ嫉妬などの攻撃を受けることを覚悟しておきましょう。
66 徳こそ真の財産であり、所有者への真の報酬だ
低俗な人間は、食べ物が通過する袋に過ぎず、何の徳も実践しない彼らには、排泄物が満杯となった便所が残るだけである。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P214(フォースター手稿)
「快楽に溺れるものは、野獣の仲間になれ」(パリ手稿H)にもあるように、ダ・ヴィンチは、欲のままに生きる生き方は一瞬の幸せにすぎず、徳によって身につけた幸福は、一生失われることはないと考えていました。
67 親の恩を知り、報いようとする気持ちを持て
ペリカン―この鳥は、 自分の子供たちに対してこの上ない愛情を持っており、巣の中で子供たちが蛇に咬まれて死んでいるのを見つけると、自らくちばしを自分の心臓に突き刺して、 雨のように降りかかる血で子供たちを浸し、甦らせる。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P216(パリ手稿H)
ダ・ヴィンチの生みの母親は、身分の違いが理由で父親とは結婚できず、息子を育てることなく去っていました。しかし、晩年になってダ・ヴィンチのもとを訪れています。その母親にダ・ヴィンチは、指輪や宝石を渡しているようです。産んでくれた母への感謝を忘れてはいないのでしょう。
68 運動が心と体を休める
健康を保つ方法を教えよう。つまり、君が医者を避けるように注意すればするだけうまくいくだろう。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P218(解剖手稿)
ダ・ヴィンチは医者が嫌いだったようでパリ手稿Fに、医者のことを「生命の破壊者」と表現しています。500年前の医療技術が今よりも低かったということはあるかもしれませんが、今日でも、心配だからと不必要に医者にかかり、飲まなくてもいい薬をのんで体調を悪化させている人がいるのは事実です。病気にならないためにも、ダ・ヴィンチは普段から軽い運動をすることを勧めていました。
69 やりたくない仕事は断れ
金銭欲に負けて、その芸術によって当然手に入る栄光を、捨ててしまってはいけない。 人体のさまざまな美しい部分でも、道行く人の足を止めさせるのは、 どこだと思う? それは顔の美しさであって、豪華な装飾品ではないことを、あなたは知らないのか。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P220(ウルビーノ稿本)
ダ・ヴィンチは、マントヴァ候妃のイザベラ・デステというお金持ちの女性から絵を描くよう依頼され、何度も催促されましたが、最後まで描きませんでした。大金を積まれてもやりたくないことはやらず、やりたい仕事に専念して自分の幸福感を守ったのでしょう。
70 利他的じゃなければ仕事じゃない
私が世に貢献することに飽きる前に動けなくなりますように。 世の中の役に立たなくなる前に動けなくなりたい。 倦怠よりは死を望むということだ。私は人に仕えることには満足しないが、世の中のためなら、どんな仕事も私をうんざりさせたり、疲れさせることはない。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P222(ウィンザー紙葉)
ダ・ヴィンチの仕事の選び方は、「利他」が基本でした。自分がやっていることに、「貢献感」を味わえますか? 人生の大半は仕事に費やします。幸福感を得るために、ときどき振り返ってみましょう。
71 幸せにする対象を拡大し続けよ
この恩恵を人類に与えるために、私は整然と復刻する方法をお伝えしよう。後世の人々よ。金を出し惜しみして木版で印刷しようなどと、ケチることはないようにお願いする。
引用:『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』P224(解剖手稿)
偉大な人は、時間や場所を超えて、世のため人のために行動しています。他人を幸福にすることを「利他」といいます。元々仏教由来の言葉です。『浄土論註』という書物には「自利に由るがゆえにすなわちよく利他す。これ自利にあたわずしてよく利他するにはあらざるなり」、つまり、自分が幸せでなければ、他人を幸せにできないとあります。まず自分を幸せで満たし、余裕が出てきたら幸せの範囲を拡大しましょう。そうすれば幸福感はますます高まります。
おわりに
レオナルド・ダ・ヴィンチは、多くのことを手記に残し、それは現在の私達にとっても重要な言葉ばかりです。
その時その時の人生のシチュエーションで、自分に必要な言葉は変わってくると思います。
あなたの人生を変えるレオナルド・ダ・ヴィンチの名言が、ここで見つかれば幸いです。