読書3.0〜天才ダ・ヴィンチの読書術 前編〜

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ダ・ヴィンチもやっぱり本を読んでいた?

世界一有名な絵画『モナ・リザ』を描いたダ・ヴィンチは、500年前の社会では入手困難だった本を大金はたいて購入するほどの読書家でした。しかし、最初から読書に熱中していたかというとそうではありません。

「経験の弟子レオナルド・ダ・ヴィンチ」という彼の言葉から分かるように、自らの体験を重視した人物がダ・ヴィンチだからです。そんなダ・ヴィンチも、やがて読書の重要さに気づき、晩年にかけてどんどん蔵書量を増やしていっています。

彼は画家でありながら、乗り物や日用品の発明を行った科学者、さまざまな学問分野の知見を持つ哲学者でもありました。

“万能の天才”というキャッチコピーを持つダ・ヴィンチですが、彼はいったいどんな本を読んでいたのか。もしそれが分かるなら、知りたくありませんか?

実はダ・ヴィンチが残した膨大なノートが残っており、そこに読んだ本のリストが書き留められています。とはいえ、書き留められたもの以外も読んでいたと思われるので、全部ではなかったはずです。

そのノートの中には、100冊以上の本のタイトルが記録されているので、ダ・ヴィンチは読書家だったといっていいでしょう。天才と言われる人が影響を受けた本やジャンルは何だったのか、ご紹介したいと思います。

読書1.0〜凡人の読書〜

私たちが生まれて初めて読んだ本は何でしょうか? 

もしかすると母親に読み聞かせをしてもらった絵本かもしれません。あるいは、学校で勉強した教科書だったのかもしれません。さて、絵本と教科書、この2つに共通していることは何でしょうか。

それは、「自分から選択したものではなく、親や社会が読むにふさわしいと半ば一方的に子供に与えた本」であるということです。

周囲からの要請で読む読書は、何も悪いことではありませんし、大きな成長を促す要因になることもあると思います。

ダ・ヴィンチは、アシュバーナム手稿と呼ばれるノートの中で、こんなことを言っています。

「食欲がない状態で無理に食べると健康を損なうように、願望のない学習では覚えられず、学んだことも定着しない」

言い換えると、本人の気持ちがないのに、無理やり強制されて本を読んだとしても、何も身につくことはないということです。「今の時代のトレンドだから」、「とにかく試験に合格するために読まなきゃならないから」、「興味がないけどみんな読んでるから」、このような理由で読む読書では得られるものがあっても少なく、自発的な読書をしているとはいえません。

「凡人の読書」、読書1.0とは、盲目的に周囲に流されて、ただ読むことをこなす、“意思のない読書”です(世の中で一般的に言われているものではなく、筆者独自の定義です)。

せっかく読むなら、記憶に残る読書をしたいですよね。

読書2.0 〜要領がいい人の読書〜

毎年たくさんの本が本屋さんに並びます。出版社から次々と本が出版されていますが、1年間にどれだけの本が刊行されているかご存知でしょうか? 

その数、約7万冊だそうです。

1年間に出版される7万冊だけでも、おそらく生涯かけても読み終わらない人が大半でしょう。
ギリシャの哲学者であるプラトンの『饗宴』という本は、紀元前400年頃の話です。ただでさえ古(いにしえ)の時代から本は存在しているのに、今日では電子書籍も生まれ誰でも本が書ける時代になり、世界にはほぼ無限と言いたくなるほどの本が存在します。

本と一口に言っても、良書とそうでないものもあります。口コミを頼りに良書を読むこともできますが、自分にとって本当にいい本かどうかは実際に読んでみないとわかりません。一部では、ひたすら本を速く読む「速読」という読書法が流行りました。

いかにスピーディに効率よく本を読むかが速読のポイントですが、そもそも速読に挑戦する人は、読みたい本がたくさんある人です。読みたい本があまりなければ、わざわざ速読に挑戦しようという気もおきないからです。読みたい本がある、ということは、多かれ少なかれ、そこに自分の意思が存在しています。

読書2.0は読書1.0とは反対に、「自分で読みたい本を選別し、主体的に読む読書」であると私は定義をしています。

読書3.0〜天才の読書〜

最後に「読書3.0」、ダ・ヴィンチに学ぶ天才の読書についてご紹介いたします。
ダ・ヴィンチが読んだ本のジャンルは実にさまざまで、小説から学術書、古典や教養書など幅広く、今日の私たちが知っている本も読んでいました。

たとえば、『イソップ童話』も蔵書リストに入っています。『イソップ童話』と聞くと、子供向けの本ではないか? と思うかもしれません。

ダ・ヴィンチはなぜ『イソップ童話』を読んだのでしょうか?

それは私が思うに、『イソップ童話』から文章の伝え方を学ぶためだったのではないかと思います。
『イソップ童話』は、主に動物の物語を通して、人生におけるメッセージを伝えている本ですが、動物好きのダ・ヴィンチは興味を引かれたのでしょう。
ただ読むだけではなく、『イソップ童話』を参考にして、自分ならどんな動物を使った人生に気づきを与える物語が書けるだろうか、自分のアイディアに昇華させるという目標を持って読書をしたのではないかと思います。

例えば、こんな言葉を残しています。

ガマガエル
ガマガエルは、太陽の光から逃れるものだが、もしも無理矢理それを浴びさせると、大きく体を膨らませ、頭を下に隠して日光を遮ろうとする。それと同じで、明るく輝かしい徳に敵対する者はせいぜい尊大さで膨らんだ心で無理矢理それに立ち向かうことしかできない。
(パリ手稿H)

ミツバチは詐欺になぞらえられる。なぜなら、口には蜜を持ちながら、尻には毒を持っているからである。
(パリ手稿I)

つまり、読書1.0〜3.0を整理すると、

【読書1.0】
凡人       自分の意思がなく、周囲に流されて読むが記憶に残らない

【読書2.0】
要領がいい人   自分の意思はあり、ひたすら大量にインプットする

【読書3.0】
天才ダ・ヴィンチ 自分の意思があると同時に、応用してアウトプットまでする

ぜひ、レベルアップして読書3.0を目指していきたいものです。次回は、より具体的に読書3.0の実践方法をお伝えしたいと思います。お楽しみに!

読んだ知識を今すぐ血肉化せよ!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2022年 9月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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