レオナルド・ダ・ヴィンチのメモ力【万能の天才にした3つの魔力】

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ビル・ゲイツが28億円で落札したノート

1994年、マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツが、レオナルド・ダ・ヴィンチのノートである『レスター手稿』を28億4000万円で落札した事実をご存知でしょうか? 本のジャンルでは過去最高額だったため、世界で最もプレミアムな価値がつけられた書物は、ダ・ヴィンチの直筆ノートなのです。

ビル・ゲイツは、自分1人のコレクションとして楽しむのではなく、毎年1回、世界のどこかで公開することを決めていました。実は日本でも、2005年に『レスター手稿』の展覧会が開催されています。少し前に、ビル・ゲイツ夫妻の離婚ニュース報道がありましたが、「このノートの所有・今後の行方はどうなるんだろう?」と話題になっていました。

世界一有名な絵画『モナ・リザ』を描いたのはどんな動機だったのか? それは500年経った今でも謎に包まれています。

『ダ・ヴィンチ・コード』という作品でもダ・ヴィンチが絵画に秘めたメッセージに注目が集まりましたが、自分の主観で読み解こうとするよりも、彼が残したノートを頼りに考察すれば、もっと核心に迫ることができるのではないか。そう思って私もダ・ヴィンチのノートを読んでいます。

天才が書いたノートは、一風変わっています。私的な日記のような記録はゼロに近いほど存在せず、観察・研究した記録、思索の足跡、絵画の習作・構想スケッチ、格言やなぞなぞなどが縦横無尽に記されているのです。

メモのことを「メモランダム」ともいいますが、思いついたことがランダムに書いてあるページもしょっちゅう散見されます。まさにダ・ヴィンチのメモ力は凄く、メモ魔といっても過言ではなく、この膨大なメモの習慣こそが、万能の天才への一助になったことは疑いありません。

『レスター手稿』 (天体や水流などについて考察が綴られているノート)

バリエーション豊かなダ・ヴィンチ・ノート

ダ・ヴィンチが残したノートは『レスター手稿』以外にも、地図帳大のサイズからポケットサイズまでいろんな手帳が現存しています。それらのノートの複製版も数量限定で出版されていますが、俗に「ファクシミリ版」と言われています。ネット辞書のコトバンクでは、「ファクシミリ版」について、このように解説されています。

※「ファクシミリ版」
書物や美術品などの複製のうち、特に原資料の内容だけでなく、物理的形態を含め、できる限り忠実に再現した版。例えば図書の場合、原資料の本文・図像などの形・色を写真製版技術によって正確に再現するだけでなく、紙質・装丁などの造本面についてもできる限り忠実に再生したもの。ファクシミリ版は、他の複製に比べ手間・費用がかかるため、特に貴重な資料である場合にのみ発行される。

ファクシミリ版とは一言でいうと、質感含め本物そっくりに再現した複製本ということです。私もダ・ヴィンチのノートを探していたときに、初めて「ファクシミリ版」の存在を知ったのですが、手にとって驚いたのが、まず表紙の異様さです。

次の画像は『トリヴルツィオ手稿』のファクシミリ版ですが、箱を開封し、分厚いハードカバーを取り出すと、中には革製の本が埋め込まれていました。イタリアの皮職人が本物そっくりに再現しているのです。300部しか出版されておらず、私の所持しているものは107番と番号がつけられています。

『トリヴルツィオ手稿』ファクシミリ版

他のダ・ヴィンチ・ノートも忠実に再現されているのですが、汚れやページ抜けもそのまま再現されていて、また驚きです。ページが抜けている部分は「何者かによって抜き取られてたのか?」という映画のような想像をさせられます。

『パリ手稿K』ファクシミリ版
『アシュバーナム手稿』ファクシミリ版


地図帳サイズの『アトランティコ手稿』はかなり巨大で、新書と比べて写真を撮ってみましたが、いかに大きいサイズの用紙にダ・ヴィンチが描いていたかがわかるかと思います。

『アトランティコ手稿』ファクシミリ版と新書

このような、内容はもちろん、サイズから質感までリアルに再現された本に接する機会はほとんどないと思います。大きな図書館に行くと、ダ・ヴィンチの手稿を閲覧することもできますので、ご興味のある方は、ぜひ贅沢かつ新鮮な気分を味わってみてください。

実際に、私のイベントに参加された方で、図書館に行ってダ・ヴィンチ・ノートのファクシミリ版を目にした方がいたのですが、想像以上だったと感動されていました。やはり画像で見るとの、実際に手にとってみるのとでは雲泥の差があります。

メモ帳は自分の師匠

ダ・ヴィンチは現存しているものでも8,000ページものメモを書き残しています。失われたものを含めると、2万ページ以上あったのではないかと推測されています。

1966年にスペインで発見された『マドリッド手稿』という事例もあるため、まだこれから世界のどこかに眠っているダ・ヴィンチ・ノートに出会えるチャンスもあるかもしれません。この『マドリッド手稿』ですが、ⅠとⅡの2種類があります。Ⅱのほうは走り書きのメモ形式なのですが、Ⅰの方は非常に美しいスケッチと文章が書いてあります。このことから、ダ・ヴィンチはノートを使い分けることを意識していました。

『絵画の書』の中で、ダ・ヴィンチは小さなノートをいつも携行し、そこに観察したことを保存しておくようにアドバイスをしていました。それは人間の記憶力には限界があることを知っていたからです。そのため、メモ帳は自分の師匠であると言っています。

現代であれば、スマホのメモ帳を活用して、思いついたことを保存しておくとよいでしょう。私もスマホメモを習慣化しています。メモ帳は持っていない時がありますが、スマホは大抵いつも手元にあるので、書き漏れを防ぐことができます。

次回は、ダ・ヴィンチのノート術をご紹介いたします。

なお、ダ・ヴィンチ・ノートを分析して7つのダ・ヴィンチ力に体系化した拙著『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』(飛鳥新社)も発売中です。面白いと好評頂いてますので、ご興味ある方はぜひご一読ください。

図書館に行って、ダ・ヴィンチの手稿を読んでみよう!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2021年 11月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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