天才ダ・ヴィンチが熟考した「愛」の教え 概念編

目次

天才が考える愛とは何か?

今回の記事では、ルネサンスの万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチが考える「愛」とは何か? について考察していきたいと思います。

皆さんは、「愛」とは何か? と、突然聞かれたらどのように答えますか?

まず、辞書で「愛」の定義を確認してみましょう。
デジタル大辞泉というネット版辞書をご存じですか?
実はこの辞書、365日、新聞、雑誌、ネットニュースをチェックして、どんどん新しい言葉が追加されています。スマートフォンアプリ版にも対応しているので、気になる人はダウンロードしてみてください。

デジタル大辞泉には、以下の4つの意味が掲載されています。

1 かわいがり、いつくしむこと。思いこがれる。いとおしいと思う気持ち。
2 対象を気に入って楽しむ。
3 二つとない対象を大切にする。
4 大事なものを手放したくないと思う。おしむ。

おそらく多くの方は、これらのどれかに近しい意味を想像したのではないでしょうか?

辞書によって定義が異なるため、他の辞書でも意味を確認してみたいと思います。

日本で一番売れているという、新明解国語辞典第八版には、

「愛とは、個人の立場や利害にとらわれず、広く身のまわりのものすべての存在価値を認め、最大限に尊重していきたいと願う、人間に本来備わっているととらえられる心情」

と、かなり具体的かつ包括的な意味として愛を捉えています。

実は、ダ・ヴィンチが考える愛も、このように対象を1つに絞らない広い意味での愛でした。

ダ・ヴィンチはすべてを愛した人

ある日、街を散歩していたダ・ヴィンチの目に飛び込んできたものがありました。それは鳥カゴです。狭いカゴに入れられて不自由そうにしている鳥を不憫に思ったダ・ヴィンチは、お金を支払って購入し、家に持ち帰るのではなく、その場で空に逃してあげた、というエピソードが残っています。

実際にダ・ヴィンチが残したノートの中にも、狩猟で鳥を撃ち殺している人を見ては、何と残虐なことをして命をおろそかにしているのか、と苦言を漏らしています。ノートにも、馬や熊、犬や猫、鳥や魚、昆虫まで、あらゆる生命のスケッチが描かれています。生き物を尊重していたため、解剖をする際もできるだけ生体実験は避けるようにしていました。

特に馬がお気に入りだったダ・ヴィンチは、騎馬像を描く参考にする上でも必要だったのですが、たくさんの馬のスケッチを描いています。動物愛護主義者、それが知られざるダ・ヴィンチの一面といえます。

動物と同じくらい尊重していたのが自然です。雄大な自然には、多くの神秘が隠されており、ダ・ヴィンチは植物のスケッチを書き残して、植物図鑑の出版を意図していたほどです。

植物のスケッチ レオナルド・ダ・ヴィンチ

自然は、画家にとってお手本となる先生であり、ダ・ヴィンチはアートを創造する際の参考にしていました。
動植物に加えて、人間も愛していたのがダ・ヴィンチでした。
それでは次に、ダ・ヴィンチの交友関係をみていきたいと思います。

独身のダ・ヴィンチは幸せだったのか?

ダ・ヴィンチは、ほとんどプライベートなことをノートに書き残さなかったので、恋愛事情は謎に包まれています。やりたいことがたくさんあったので恋愛する暇がなかったのか、あるいはうまく両立して恋愛を楽しんでいたのか、はたまた女性には興味がなかったのではないかとも想像され、同性愛だったのではないかという説もあるほどです。

孤高の天才と見られがちなダ・ヴィンチですが、さまざまな専門家や有識者との交友関係を持っていました。また、自国のイタリアにこだわることなく、晩年にはフランスに移住していますし、ドイツ人の職人とも一緒に仕事をしていました。アトランティコ手稿というノートには、このように書いてあります。

「異なる半球に別れ住む人々に告ぐ。お互いの言語を理解し、一緒に語り合い、抱擁し合うように」

さらに、“ダ・ヴィンチ・アカデミー”という、芸術家や知識階級の人たちが集まるサークルを立ち上げようとした形跡もあり、人との交流を重視していたことがわかります。

最も大切にした人づき合いは、おそらく愛弟子との交流です。ダ・ヴィンチには何人かの弟子がいましたが、遺産のほとんどを譲り渡した弟子に、フランチェスコ・メルツィという人物がいます。師匠に息子のように可愛がられたメルツィは、ダ・ヴィンチの死後、このような手紙を書き残しています。

「私にとって父親同然のお方でした。この悲しみは言い表すことはできません。私の命の続く限り、私の心が晴れることはないでしょう。それも、日々、師が私に注いでくださった愛情を思えば当然のことと思われます」

ダ・ヴィンチは生涯独身でしたが、自分のことを理解してくれる弟子に出会え、幸せな愛ある一生を送ったのではないでしょうか。

結婚は何のためにするのか?

愛と聞くと、「夫婦」や「結婚」と結びつけられてしまい、極論、独身は愛とは無縁と捉えられてしまうことがあります。

しかし、新明解国語辞典第八版での愛の定義にもあるように、特定の異性を大切にすることだけが愛なのではなく、もっと広い意味合いを包括しているのが「愛」という概念です。

昨今、婚期が遅くなっている現代社会ですが、20代半ばから40代にかけて婚活が盛んになります。ではなぜ人々は結婚をするのでしょうか?

自分の意思ではなく、「親から早く結婚しなさいと言われるから」、という理由の人もいるでしょう。これには、「結婚=善」、「独身=悪」という暗黙の了解が根底にあります。結婚適齢期になってもまだ独身なのは、常識的によろしくないという考えです。

しかし、結婚する目的は、親や世間の常識に迎合するためではなく、自分自身が幸せになるためです。もし、体裁だけを整えるために不本意な結婚をして不幸せになったのであれば、それは本末転倒でしょう。

結婚する目的が、「心が通じ合える人と過ごしたいから」なのであれば、結婚する以外にも、ダ・ヴィンチのように、心が通じ合う仲間を作ることで目的を果たせるかもしれません。今一度、何のために結婚をするのか見つめ直してみてもよいかもしれません。

さて、次回の記事では、もう一歩踏み込んで、本当の愛を実現するための方法をダ・ヴィンチに学んでみたいと思います。

愛がなければ、他に何があるというのか。レオナルド・ダ・ヴィンチ

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2022年 10月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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