レオナルド・ダ・ヴィンチとは?

レオナルド・ダ・ヴィンチは、ルネサンスの三巨匠の1人で、万能の天才と言われています。
もっとも有名な絵画作品に、『モナ・リザ』、『最後の晩餐』、素描では『ウィトルウィウス的人体図』があります。
ダ・ヴィンチには、ミケランジェロ、ラファエロという偉大な芸術家のライバルがいました。彼らは絵描きでありながら、彫刻や建築分野まで手がけるマルチな活躍をしていました。しかし、ダ・ヴィンチは彼らよりも幅広い分野に興味を持っていました。アートの垣根を超えて、科学的な発明や、あらゆる学問分野にも精通していたので、“スーパーマルチ”な存在として脚光を浴びていたのです。
そんな天才の思考の軌跡について記されたノートがあります。ダ・ヴィンチはメモ魔であり、思いついたことを積極的にノートに記録していました。パリ手稿、マドリッド手稿、フォースター手稿、レスター手稿、アランデル手稿、鳥の飛翔に関する手稿など、いくつかノートを使い分けていますが、もっとも長期にわたって使用したノートの1つが「アトランティコ手稿」です。
アトランティコ手稿とは?
アトランティコ手稿は、現在イタリア、ミラノのアンブロジアーナ図書館に所蔵されています。
1119紙葉という単位で記録されていますが、ページ数は2倍の2238ページです。
26歳ごろから使い始め、晩年亡くなる前年1518年までの40年間という長期間にわたって記録されています。
ジュンティ出版社からファクシミリ版という精巧なコピーが出版されていますが、大型サイズで12巻あります。アトランティコという名前は、地図帳を意味する「アトラス」に由来しています。ダ・ヴィンチの死後、彫刻家のポンペオ・レオーニという人物によって、地図帳の大きさに製本されたため、第三者の編集が入ったノートということになります。
アトランティコ手稿に書き残された内容は、多岐にわたっており、
重力の問題、音響、光と影、数学、幾何学、植物学、動物学、色彩学、遠近画法、兵器、築城、機械工具、書簡の草稿など、あらゆる研究分野が含まれています。
2025年に開催された大阪関西万博では、「金箔製造機」、「紡績機」、「建築習作のスケッチ」、「合成影の研究」についてのノートが公開されていました。詳しい内容はこちらにまとめていますので、よろしければお読みください。

大阪市立美術館の「天空のアトラス イタリア館の至宝展覧」のアトランティコ手稿
大阪関西万博閉幕後、大阪市立美術館では、「天空のアトラス イタリア館の至宝展」が開催されました。予約を開始するや否や殺到し、あっという間に予約が埋まりました。
万博会期中、イタリア館は最大で10時間ほど並んだという報告もありましたので、行くのを諦めた方も多かったと思います。万博熱冷めやらぬ興奮から、ここぞとばかりに気合を入れて予約をしたのでしょう。
実は、大阪市立美術館の「天空のアトラス イタリア館の至宝展」では、万博会期中に展示されていた4枚とはまた別のノートが展示されました。わざわざ、展覧会のためにイタリアから新しいノートが送られてきたのです。これも、この展覧会が人気になった理由の1つでしょう。
展示されたノートの内容は、
『水を汲み上げ、ネジを切る装置』

『巻き上げ機と油圧ポンプ』

の2つです。
ダ・ヴィンチは運河に関する仕事もしていたので、このような装置も発明していたのでしょう。
ダ・ヴィンチは他にも装置をいくつも発明していました。例をあげると、同じアトランティコ手稿にある『アルキメデスの螺旋ポンプ』があります。

天才ダ・ヴィンチといえど、すべて0から1を生み出す、イノベーティブな発明をしていたわけではありません。むしろ、先人たちの知恵を拝借し、バージョンアップした発明を積極的に行っていました。先人の中でも、最も尊敬していた1人がギリシャ人科学者のアルキメデスです。
アルキメデスは、水力学に関する書物『流体静力学について』を書いており、ダ・ヴィンチはその本の内容に関連した研究をし、螺旋ポンプを応用する方法を模索していました。
それほどダ・ヴィンチが螺旋ポンプに魅力的に感じたのには理由があります。アルキメデスが発明した螺旋ポンプは、回転する主軸に巻きつくチューブからできていて、その構造から回転運動によって、人の労力に頼らずに井戸の底から水を組み上げることができるためです。ダ・ヴィンチはきっと、人々の生活を楽にする科学的発明の素晴らしさに感動していたのでしょう。
アトランティコ手稿の代表的な美しいスケッチ作品
アトランティコ手稿には、とても美しくインパクトのあるスケッチがあります。
いろいろな軍事兵器も描いてあり、爆弾を飛ばしている大砲のスケッチがあります。

弾道の軌跡が描かれており、着弾した様子もリアルです。
この爆弾には破片がたくさん内蔵されていて、着弾するとあらゆる方向に飛び散る仕組みになっています。
他にも、大きな弓矢、戦車、剣などの軍事スケッチがたくさんあります。
私がアトランティコ手稿の中で、最も美しいと感動したスケッチは半円の幾何学の羅列です。

半円の中に、1つ1つ異なる図形と説明書きがされています。ダ・ヴィンチの幾何学への没頭の凄さが垣間見れるスケッチです。この他、ダ・ヴィンチのノートには、無数の幾何学図形が見られれます。
こちらは要塞についてのスケッチです。

残念ながらダ・ヴィンチの構想した建造物は、実現せずに終わったものが多いです。他には大聖堂や長大な橋の設計なども書き残されています。彼は優れた建築家でもありました。そして、都市計画プランナーとして活躍していたことも、ダ・ヴィンチの意外な一面でしょう。
時代の要請を受けて、クリエイティビティを多方面で発揮していきました。ダ・ヴィンチのノートを紐解くと、彼の足跡をたどることができるのです。
アトランティコ手稿を見るには
アトランティコ手稿は、ファクシミリ版で出版されていますが、現在絶版になっています。
もし実際に見たければ、国立国会図書館など規模が大きく蔵書量が多い図書館で検索してみると良いでしょう。
実際に生で見ると、その迫力に圧倒されるはずです。
こちらは私が書いた『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』のビジネス書と比較したアトランティコ手稿です。いかに大きいかサイズ感がわかると思います。

なかなか図書館まで行けないという人にも、アトランティコ手稿の全ページをWEBで見る方法もあります。
所蔵先のアンブロジアーナ図書館が、WEB上で公開しています。こちらのURLからご覧ください。
https://codex-atlanticus.ambrosiana.it/#/Overview
まとめ
いかがだったでしょうか。
万博をきっかけにダ・ヴィンチのノートに関心を持たれた方も多いと思います。そのノートには、日常生活を豊かに便利にするような発明品の数々、研究のプロセスなどが記録されており、天才の思考をたどることができるのです。
一体、天才のダ・ヴィンチは日々何を考え、膨大な手稿にどんなメッセージを書き残したのか。
ダ・ヴィンチ研究者の桜川Daヴィんちがわかりやすく解説をした本『超訳ダ・ヴィンチ・ノート』があります。2025年に舞台化につながった話題の本です。もしご興味を持たれた方はぜひ読んでみてください。

