ダ・ヴィンチ流会話術では、知識以前にスタンスを重要視する
万能の天才と言われるレオナルド・ダ・ヴィンチは日々どんなことを話していたのか?網羅するジャンルは幅広く、芸術・科学・医学・軍事・哲学・天文学・地質学・光学・幾何学など多岐に渡り、知識人たちと知的な会話を繰り広げていたに違いありません。
どんなことを話していたか、500年前にタイムスリップして聞いてみたいものですが、彼が残したノートや同時代人からの証言で、ある程度窺(うかが)い知ることができます。
前回の記事ではダ・ヴィンチに学ぶコミュニケーション3.0の極意【理論編】についてご紹介いたしました。
ダ・ヴィンチのように知的な会話をするには、知識がないと話せません。ただし、知識を蓄える以前に知っておきたいことがあります。それは会話のスタンスです。スタンスがしっかりしていれば、相手も受け取りやすく、また印象にも残ります。
ダ・ヴィンチが実践した人を惹きつける会話のスタンスは「共感コミュニケーション」と「驚嘆コミュニケーション」の2つ。これがコミュニケーション3.0の正体です。今回は後者の「驚嘆コミュニケーション」の具体例についてご紹介していきます。
鉄板の驚嘆ネタはこうすれば作れる!
唐突ですが、皆さんはスケートをしたことがありますか? 北国の方はありそうですが、そうでない方もスケート場に行って滑ったことがある人もいるでしょう。私は北海道の出身なのですが、小学生の頃は、体育の授業で冬はスケートがあり、毎年スケート大会が開かれていました。
で、そのスケートなのですが、生徒はどこで滑っていたと思いますか? スケート場や凍った湖の上、という回答をよく聞くのですが、実は校庭です。校庭に水を撒いて天然のスケート場を作り、そこでスケートの授業が行われていました。休日の土日は市民にも開放されていて、マイシューズも持参しているほどです。
ところがこの天然の校庭スケート場、北海道の北見市では昨年、12校から4校へと3分の1に減少してしまったそうです。理由は、朝夜の水撒き作業や氷のひび割れの補修作業などが負担になり、働き方改革のしわ寄せが影響しているため。
「トンネルを抜けるとそこは雪国だった。(正確には、国境の長いトンネルを抜けると雪国であった)」という川端康成の名文がありますが、「教室を出るとそこはスケートリンクだった」というワクワク感は今でも忘れられません。子供の頃は冬になると気がつくと校庭がスケートリンクだったのですが、見えないところで教職員の方が準備して下さっていたことに、今さらながら感謝したいと思います。
(※出典:mamatalk 減る小学校スケートリンク 北見、12校が4校にhttps://mamatalk.hokkaido-np.co.jp/special/pickup/53798/ )
さて、おそらくこの校庭スケートリンクの話は、北国の方でなければ初耳だったのではないかと思います。初対面で会ってよく話題になるのが、出身地。地元ならではの新鮮な体験話は聞く人を惹きつけます。誰も知らないようなちょっと驚きのある地元エピソードを盛り込むのがコツです。
方言も「驚嘆コミュニケーション」の格好のネタになる
出身の話になった時に、よく聞かれるのが方言。たとえば、北海道で有名な方言の1つが「なまら」。「とても」を表す北海道弁で「なまらすごい!」みたいに使います。「なまら」は比較的知られているので、驚嘆コミュニケーションをするには、別の事例を使います。
さて、ここで次の質問です。皆さん鼻血が出たら、上の写真のようなティッシュを鼻に詰めて対処したりしますよね。
「ところで、これは何ですか?」
「え? 何ってティッシュの塊だけど・・・」
北海道民は、鼻に詰めるティッシュの栓を「つっぺ」と呼んでいます。そうです。このティッシュの塊にはれっきとした名称があるのです。そして、鼻血が出た際、親から「つっぺしなさい!」と言われたものです。(私は小さい頃、鼻血をよく出していましたのでかなりお世話になりました)
私は当たり前のように、「つっぺ」は日本全国共通語だと思っていたのですが、あるテレビ番組で、「つっぺ」はアイヌ語に由来している北海道弁であることを知り衝撃を受けました。試しに周りにいる道産子以外の人に聞いてみると「つっぺ」のネーミングを知る人は皆無…。
「つっぺ」は、元々「つきへす(突いて押す)」という意味があり、それが「つっぺす」になり、さらに「つっぺ」に変化していったとか。
元々動詞なのですが、ティッシュの塊自体が栓を意味する名詞扱いをされるようになったのではないかと思います。このような意外な方言は面白く盛り上がりますので、ぜひ地元の面白い方言があれば会話のストックにしておきましょう。
北海道にもピラミッドがあるのを知ってました?
コミュニケーション力のある人と先日車で5時間運転することになり、車内でいろいろと会話をしていました。人の懐に入るのがうまいと定評がある人で、話を聞いてみると「共感コミュニケーション」と「驚嘆コミュニケーション」を思い切り実践しているのです。
人の話は否定せずに共感の姿勢で耳を傾け、話すことは自分が驚いた体験話や見聞きした意外な情報ばかり。そのうちの1つに、テレビで見たピラミッドの話がありました。
その内容は、「ピラミッドは王家の墓ではなく、画期的な発電所であった」という説。世界的な謎には次から次へと新説が打ち立てられますが、新しい見方を知ることは面白く視野が広がります。
ピラミッドの話を聞いていて、思い出したのが私の地元、北海道千歳市にあるピラミッド。外から見ると完全にピラミッドですが、実際は企業の工場です。エジプトのキザの第一ピラミッドと同率同方位にこだわり、高さ30メートルで再現されています。
このような地元の人しか知らない名所(?)も、1つのネタとして持っておくといいでしょう。
今回は地元ネタを中心に「驚嘆コミュニケーション」をご紹介しました。次回はまた別の切り口で書きたいと思います。お楽しみに!
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2021年 1月 公式掲載原稿
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)