モナ・リザ田んぼアートに学ぶ伝え方の工夫

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「田んぼアート」を知っていますか?

青森県中央部、津軽平野にある田舎館村(いなかだてむら)では、長年、田んぼを利用したアートを作り話題を呼んでいます。2022年は、世界的名画であるレオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、近代日本の名画である黒田清輝の『湖畔』がモチーフとなりました。西洋×東洋という名画のコラボレーションという取り合わせも素敵ですね。

例年の見頃は7月中旬から8月中旬ですが、時間の経過と共に稲の色合いも変化して楽しめます。ちなみにこちらの写真は9月下旬です。『湖畔』の方は消えかけていますが、7月の頃はもっと青々とした雰囲気でハッキリと浮かび上がっていました。

『モナ・リザ』の方は、9月下旬でも“黄金色の見頃”として、再度ニュースでも取り上げられていました。こちらがその“黄金のモナ・リザ”です。

額縁まで再現されていて、人物描写のクオリティも本物にそっくりです。来年以降はまた別の作品が制作されるようですが、どのような経緯でこの田んぼアートは誕生したのでしょうか?

田舎館村の取り組み

青森県にある田舎館村は、2100年前の弥生時代から続いている稲作の農村地帯です。人口は7446人(2022年10月末時点)。6月初旬に田植え体験ツアー、10月初旬には稲刈り体験ツアーが行事として予定されており、お米に親しむ機会が用意されています。

弥生時代から続く稲作文化を大切にし、古代米の稲で描く田んぼアートをはじめ、異なる石の色を並べて描く「石アート」、スノーシュー(雪の上を歩行するための道具)で雪を踏み固めて描くスノーアートなど、“アートの村”として村の魅力を伝えています。

実際に、「田んぼアート駅」という駅まで存在します。

近年、東京一極集中、地方の過疎化が問題視されていますが、このような地方、村における独自性ある取り組みはとても素晴らしいことだと思います。伝統を大切にしながらも、大胆な発想で多くの人に目に止まるように伝えていくことは、他の地方でも応用できることではないでしょうか。

モナ・リザは2度目の挑戦

実を言うと、モナ・リザは、今回が初めてではなく、2003年にも田んぼアートとしてお披露目されていました。その時のモナ・リザは、3色の稲しか使用していなかったため、陰影や輪郭の表現がうまく再現できず、平坦なイメージとなっていました。

http://www.vill.inakadate.lg.jp/docs/2012051800018/
出典:田舎館村のホームページ 平成15年度の田んぼアート水田風景

2011年からは7色の古代米を使用して微妙な陰影も表現できるようになり、観覧場所の高さも計算した遠近法を取り入れて、よりリアルに見えるモナ・リザへと変貌を遂げました。

レオナルド・ダ・ヴィンチは遠近法にもこだわって絵画を制作しており、空気遠近法(距離に応じて、大気の青みの濃さを調整して描く技法)を発明しています。リアルな描写の飽くなき追求をしたダ・ヴィンチの想いが反映されているような田んぼアートになりました。

間近で稲を見ると、このような感じです。

権威を借りる

青森にある田舎館村の存在を、今回のモナ・リザ田んぼアートがきっかけで初めて知ったという人も多かったのではないでしょうか?

少し話は変わりますが、2020年、「Invader」を名乗るフランス人アーティストが330個のルービックキューブでモナ・リザを制作しました。その作品がオークションの競売にかけられ、1800万円で落札されると予想されましたが、実際は約6000万円と大幅に予想を超える価格で落札されました。

出典:AFP BB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3266602

もしこのルービックキューブが、モナ・リザではなく、自画像だったらどうでしょう。おそらく、「ちゃんと人の形になってるね」というあまり大きな感動もない反応で、それほど見向きもされなかったことでしょう。

それでは、モナ・リザではなく、黒田清輝の『湖畔』の女性を描いていたらどうでしょうか?

黒田清輝は、日本人でもある程度アートに素養のある人でないとよく知らないかもしれません。国際的なオークションとなると、日本のアートにも精通した人でないと認知度が低いため、モナ・リザほどの価値はつかなかったと思います。

過去にも、モナ・リザの複製画がオークションで高値で取引された例は多くあり、ルービックキューブの作品が予想をはるかに超えて6000万円で落札されたのも、田舎館村の田んぼアートがニュースになって話題を呼んだのも、やはりそのモチーフが誰もが知るモナ・リザであったことが大きい。モナ・リザは、うまく利用することで、世に何かを知らしめるための権威的なツールになります。

幸いモナ・リザは500年前の作品なので著作権も切れています。ぜひ、まだ誰もやっていないような表現で、モナ・リザを取り入れてみてはいかがでしょうか。

モナ・リザを使え!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2022年 11月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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