凡人レベルに終わってしまうノート術 「ノート1.0」の3つの特徴
ルネサンスの万能の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチは生涯ひたすらノートに綴り続けたメモ魔だった。そんな記事を前回書きました。
今回は、より具体的で実践的なノート術をご紹介いたします。
学校教育を受けた人なら誰でも、板書をノートにとったことがあるはず。先生が話し、黒板に書いたことを一生懸命ひたすらノートに記録をとる。真面目に授業を受けていた人なら、それが当然のノートのとり方だと思っていたのではないでしょうか。
私自身もその1人であり、そのノートのとり方がスタンダードであると思っていました。なぜなら、私たちはノートのとり方について授業で教わったことがないからです。割合多くの方のノート、いわゆる私を含めた凡人のノートは、
・板書丸写し
・余白がなくびっしり
・文字ばかり書いている
という3つの特徴があります。もちろん一時的なテストに合格するためならこれでもいいかもしれません。
しかし、このノートの問題点は、書くことに満足してしまって記憶に定着せず、人生にそれほど変化がもたらされないことにあります。そして、自分の頭の中で考えをめぐらすこともしません。
もちろんノートに書き写すことを否定するものではありませんが、あまり創造性がみられません。私はこのノートのとり方を「ノート1.0」と呼んでいます。
次は、仕事ができるビジネスマンが活用している「ノート2.0」とは何か?を解説しましょう。
ノート術は『メモの魔力』で「ノート2.0」にレベルアップする
私が「ノート2.0」だと個人的に感じたのは、ベストセラーになった前田裕二著『メモの魔力』(幻冬舎)に載っていた方法です。
『メモの魔力』と従来のノートのとり方の違いを一言で言うと、再現性があるか否かに尽きます。ただ聞いた話を書き写していた「ノート1.0」は、自分ごとに引き当てて活用するための落とし込みがされていません。
しかし、『メモの魔力』では、見聞きした内容なり【事実】を書くだけではなく、その事実を【抽象化】、そして【転用】するというプロセスが加えられています。
抽象化とは、事実から自分が気づきを得られることは何かを考えたり、事実の背景を探ったり、事実から見えてくる特徴や法則を見つける作業のことです。書き写す作業だけだと自分で思考することがありません。そこで、抽象化のプロセスで自分ごとに引き当てます。
次に、その抽象化でまとめたことから、自分の行動に転用できないか考えます。具体的な行動に変換することで、「いい話」で終わることなく、自分の人生に生かしていくことができるのです。
マッキンゼーのコンサルタントが活用しているフレームがあります。それは「空・雨・傘」。「空」を見て、雲行きが怪しいという状況があった場合、
そろそろ「雨」が降るのではないかと解釈します。
すると、「傘」を持っていこうという行動につながります。
メモをメモで終わらせず、必ず自分が実際に行動に移すことは何かを考える癖をつける。知識や知恵をその状態で終わらせることなく、実践していくノートを使えば、人生のステージを変えていくことができるのです。
ダ・ヴィンチ・ルールを導入して、さらにノートを進化させる!
次にダ・ヴィンチがノートに書く際のルールを適用することで、ノートのレベルはさらに昇華されます。このノート術を、私は「ノート3.0」と呼んでいます。
ダ・ヴィンチのノートをめくってみると、まずあることに気がつきます。それは視覚的要素、つまり挿絵が多いことです。
たとえば、次の画像はダ・ヴィンチがノートに描いているスケッチ。水が満たされている球形のガラス容器を人が覗き込んでいますが、これはコンタクトレンズの原理を発見したエピソードで知られています。
文章でも説明書きがされていますが、ダ・ヴィンチは意図的にスケッチができるスペースを確保してから文章を書いているところがポイントです。落書きをする場合は、まず文章を書いてから、ふと思いついた時に余白に書いていますよね。ダ・ヴィンチの場合は、最初からスケッチするためのスペースを設け、挿絵がメインであるかのような構成で書いているのです。
また、次のノートも同じように、右側にスケッチ用スペースが設けられていることがわかると思います。
そして、わかりやすいように赤枠で囲みましたが、ノートの文頭には1行で、「地球の内部について」というタイトルがつけられています。ダ・ヴィンチは地球物理学を研究していたのです。ちなみに、「(地球が)完全な平面であれば、水は表面に留まらずに流れてしまうであろう。球面であれば、水はそこにただちに留まり、流れないであろう。つまり、このような球体が水球である地球と考えられる」と考察したことが書いてあります。
他には大気に注目して、「あまりに蒸気が多いと邪魔になる。蒸気が少ないと完全な空色を生み出さない。つまり、ほどほどの蒸気の配分が美しい青空色を生み出す」と書いてあります。
ダ・ヴィンチは観察魔であることを以前ご紹介していましたが、観察結果をノートに記しているのです。ただし結果を書くだけでなく、記述した内容を一言で言うとどんなタイトルがふさわしいのかまで、考えて入れるようにしています。
また、ダ・ヴィンチがノートに書くときは、テーマを決めたら、なるべく1枚におさまるようにまとめていました。どうしても文章が収まりきらない時は、スケッチ用に空けていたスペースも文章で埋め尽くしている場合もありますが、あくまで1枚で文章を完結させることを意識していました。
ただ単に板書をとる「ノート1.0」から、自分ごととして学んだことを活かす「ノート2.0」に進化させる。さらに、「ノート3.0」、ダ・ヴィンチ・ルールである
・挿絵を入れるスペースを設け、視覚的に内容を表現する
・文頭に見出しとなる、自分で考えたタイトルをつける
・なるべく1ページに内容を完結させる
を反映させることで、後で振り返って見たときに、素早く理解をすることができます。
ここで1つ問題なのは、私たちはダ・ヴィンチのようにサラサラと美しい芸術的な挿絵を描けるわけではないということです。しかし、仮に絵が不得意な人でも少し練習すればイラスト入りの文章が書けるようになります。「グラフィックレコーディング」という手法が近年注目されていますが、それも一つの手法です。
ぜひ今回ご紹介したことを参考にして、ご自身のノートに活かしてくだされば嬉しいです。
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2021年 12月 公式掲載原稿
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)