今熱中しているものがあるかどうか、まずはここから診断する
「どうして一つのことにそれほど熱中できるのか?」という大学生から頂いたご質問。前回は私のエピソードを通して、回答しました。
今回は、より具体的なノウハウに落とし込んでみましょう。
そこで、3つの軸を使うことにします。「過去」「現在」「未来」の3つです。まずは「現在」の視点から。
やりたいことを見つける上で、最も大切なことは、今“現在”の自分に捉われないということです。なぜなら、現在の自分に軸足を置いていると、視野がぐんと狭まるから。
もちろん、今大好きなことがあり、心がワクワクしている場合はそれに没頭してみてください。一見すると全然仕事につながりそうにないことでも、没頭していくと道が開けてくることがあります。
しかし、今やっていることに対して、続けてみてもあまり心が動かない。そんな時は、無理して同じことに生きがいを見出そうとしないことです。
私は学生のころ、大学の学部に関連していることをしたほうがいいと、勝手に自分でルールを作って今の自分に関連づけた範囲で物事を考えていました。しかし、それが必ずしも正しいとは限りません。今やっていることが大好きで仕方ないならよいのですが、そうでないならあまり神経質に気にする必要はありません。あなたの可能性は予想外のところから開けてくるものだからです。
今あなたは心がワクワクしているものがあるか、否か。YESならより没頭してのめりこむ。NOなら違う選択肢を考える。実にシンプルですが、多くの人が違う選択肢を選べずに足踏みします。
その足踏み状態を一歩進んで歩いて行けるようにする、それが未来の視点です。
稲盛和夫流「未来進行形」で考えると、選択肢が一気に広がる
京セラの創業者の稲盛和夫さんは、能力を“未来”進行形で捉えることが大切であると言っています。今自分が持っている知識はこれで、今こんなことしかできないから未来もその延長線だ、と捉えるのではなく、「今はできなくても未来はできるかもしれない」と考えてみる、ということです。
今できないからこそ、学びながら仕事をして身につけていけばいい、そう捉えると選択肢が広がります。もちろん、就活や転職時に能力的な条件や資格を求められる場合もありますが、やる気や素直さを重視して採用してくれるところもあるので、いろいろと探してみるといいでしょう。
そして全然違う自分になるためには、きっかけが必要です。私はそのきっかけを作るキーワードは、「異空間×異質」であるという記事を以前書いてまして、ご興味あれば参照頂ければと思います。
●やりたいことが見つかる最も効果的な方法
最後に大事なことは、過去の自分と向き合うということです。
親や友だちに、昔の自分について質問する
これまでの人生を振り返って、何か熱中したことはありませんでしたか? 「いや〜、そんなことあったかな…」という方は、両親に聞いてみると意外なことにハマっていたことを教えてくれるかもしれません。
あるいは旧友に尋ねてみると、自分では当たり前にできていても、人から見るとすごい特技と思われていることもあります。何かふと人から誉められたことはなかったか、思い返してみるといいでしょう。
私の場合、小学校で一番好きな科目は図工でした。黙々と「こうしたら面白いんじゃないか」と手を進めているうちに、気がつくと周りに人が集まってきていました。そのような特に過度な労力をかけずに自然と手がスラスラと動くこと、それが自分の特技です。
つまり図工を通して、アイディアを形にすることが得意であり熱中できる自分を発見しました。その本質的な部分をおさえた上で、今の自分の身の回りを見渡してみて、合致するものを探せばいいのです。私の場合は、企画やデザインの仕事、そしてライフワークであるダ・ヴィンチ研究につながっています。
熱中を長引かせる3つの秘訣
さて、熱中できるものを見つけたとしましょう。ここで新たな問題にぶつかることがあります。それは、熱中が冷めてしまうということ。面白かったけど、やっているうちに飽きてしまった。誰しも経験することだと思います。
冒頭の大学生の質問で、「ダ・ヴィンチに対する愛はどこからきているのか?」ということも聞かれていました。10年間ずっと研究を続けてきたのですが、それができたのは3つの理由があると考えています。
1つ目は、私のバックグラウンドと関連しています。私は幼い頃病弱で、43度の高熱を出したことがあります。42度以上の熱を出すと人間は死んでしまうと、のちに保健体育の授業で聞き唖然としたことを覚えています。
死なずに生きている自分は奇跡であり、今自分はボーナスステージにいる。そう思うとなんでも挑戦する気になれたのです。そんな自分にとって、あらゆることに挑戦をした万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチは眩しく見えました。ダ・ヴィンチほどあらゆることに熱中した人はいない。理想を体現した存在であり、私にとって永遠のロールモデルなのです。このような自分の背景と重なるものは続けやすいです。
2つ目は、ズバリ使命感。ダ・ヴィンチが熱中したことはたくさんありましたが、中でも人体解剖への熱中はすさまじいものがありました。キリスト教全盛の中世の時代、死体解剖をしようものなら、黒魔術を行う異端者扱いされる怖れがあり、実際ダ・ヴィンチは密告されて解剖を中断させられています。
また、このような他人からの非難がなくても解剖を続けることは難しいです。なぜなら設備も現代ほど整ってなく、死体の腐乱臭がある空間で作業をしなければならず、八つ裂きにされた死体と夜を共にする過酷さは尋常ではなかったはずです。
それでもやってのけたのは、正確な人体構造を明らかにして人類に貢献したいという強い使命感があったからに他なりません。私も、本当のダ・ヴィンチのメッセージを明らかにしたい!という使命感を持って研究を続けてきました。
最後にもう1つポイントをあげるなら、それは楽しいから続くというシンプルな理由です。何事も、自分が楽しいと感じなければ続かないもの。ぜひ心から楽しいと感じるものを大切にしてみてください!
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2021年 1月 公式掲載原稿
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)