美しすぎる “宇宙を表す魅惑の図形” の知られざる秘密

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5つのプラトン立体とは?

ギリシャの哲学者、プラトンという名前は一度は聞いたことがあると思います。実はプラトンって本名ではなくあだ名だったって知ってました? 本名はアリストクレスという別の哲学者のアリストテレスとよく似た名前。プラトンとは、レスリング仲間からつけられた「広い」を意味するニックネーム。“体格”か“レスリングスタイル”からつけられた名前と考えられています。

さて、そのプラトンが『ティマイオス』という著書の中で立体を紹介しており、それが今日「プラトン立体」と呼ばれています。5つの立体があり、いずれも等しい面を持つため「正多面体」といいます。

① 正四面体   ー 三角形 
② 正六面体   ー 正方形
③ 正八面体   ー 三角形
④ 正十二面体  ー 五角形 
⑤ 正二十面体  ー 三角形

そして、プラトンによると、この5つの多面体は、地球を構成する元素であり、果てはすベてを包括する宇宙を意味します。図形は単なる形ではなく、特別な意味を持っている。ではどんな意味が込められているのでしょうか?

5つの立体に込められた意味

地球を構成する元素と聞くと何をイメージするでしょうか? 「地球は青かった」と言った宇宙飛行士ガガーリンのように、宇宙から地球を眺めて見ると、海と大地が見えてきます。そして目には見えませんが、地球には私たちが生きるために不可欠な酸素を含む空気が存在します。宇宙から眺めると当たり前に存在している空気の大切さに気づきそうです。そして、人類は進化していく上で火を扱ってきました。

海は水、大地は土であり、空気と火と合わせて万物は4つの基本元素で構成されていると古代ギリシャでは考えられていました。

プラトンは、火は4元素の中でもっとも軽く、鋭く尖っているので正四面体にあたり、土はもっとも安定しているので立方体の正六面体と考え、水はもっとも活発に流動するため、一番回転しやすい正二十面体と位置づけました。そして、火を意味する正四面体と、水を意味する正二十面体の中間を空気として考え、正八面体に割り当てました。最後に残った正十二面体を、宇宙全体を表現する形として定義しました。

すべての辺の長さが等しく、すべての角の大きさが等しい正多面体はこれらの5つのプラトン立体しかありません。そのため、完全性を備える立体として尊重され、宇宙の神秘を解き明かすためのツールとして用いられてきました。正多面体の完全性と宇宙の完全性が同一視されたのです。

プラトン立体に続いて、13個の半正多面体というアルキメデスが発見した立体が紹介されました。「切頂」から始める名前の立体は、プラトン立体の頂点付近を切断した形状です。その他、複雑化した立体も並んでいます。法則性を持つ図形を発見するプロセスは、なんだかとても面白そうです。

出典:『プラントとアルキメデスの立体』ダウド・サットン、創元社

ダ・ヴィンチが描いた美しすぎる多面体

ルネサンスに活躍した芸術家であるダ・ヴィンチは、数学者であるルカ・パチョーリから依頼されて、多面体の挿絵を描いています。その中にプラトン立体やアルキメデス立体も描かれていますが、ルネサンス期に流行したと言われる「カンパヌスの球」と呼ばれる72面の美しい多面体も描いています。カンパヌスとは、13世紀に活躍した天文学者であり数学者だった人物の名前です。ダ・ヴィンチの多面体を見たパチョーリは、「並外れて正確で最高に美しい」と絶賛しています。

カンパヌスの球 『神聖比例論』 ルカ・パチョーリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ

ダ・ヴィンチの残したノートの1つ、アトランティコ手稿にも、別の立体図形が書き残されています。その名もマゾッキオです。マゾッキオとは、ルネサンス期に流行したドーナッツ型をした頭飾りのこと。複雑な幾何学立体図形のため、芸術家が作図をするうってつけのテーマとなりました。

進化する多面体

16世紀にドイツで活躍したヴェンツェル・ヤムニッツァーという人がいます。ヤムニッツァーはプラトン、アルキメデス、ダ・ヴィンチが描く多面体図形をさらに発展させました。

1568年に出版した『正多面体の透視図』という本の中には、驚くべき変幻自在の図形がおさめられています。そのうちの2つをご紹介します。

『正多面体の透視図』 ヴェンツェル・ヤムニッツァー

これらの図形を見ると、よくぞここまで生み出したな!! とうなってしまいますが、皆さんはどのような感想を持つでしょうか。

現代では、パソコンソフトを使えば、もっと複雑な図形を生み出すことも可能な時代になっています。すごい時代になったものです。

先人たちの知恵に学んでより良いものを生み出すことで、感動は連鎖していきます。
図形にもこんな歴史があるということを学ぶことで、一つ賢くなれますね。

以上、「美しすぎる“宇宙を表す魅惑の図形”の知られざる秘密」についてでした。
ではまた!

洗練された形にセンスを学べ!

旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン    2022年 7月 公式掲載原稿 
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/) 

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