最初の絵画はこうして誕生した!?
人物画、風景画、抽象画・・・
世界には実にさまざまな絵画があります。
人はなぜ絵を描くのでしょうか?
世界一有名な絵画であり、未だ謎の多い『モナ・リザ』を描いたレオナルド・ダ・ヴィンチは、人類が最初に描いたという絵についてこう言っています。
「最初の絵画は、太陽によって壁にできた人影をなぞった一本の線だった」
出典:アシュバーナム手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチ
光に映し出された人物のシルエットから絵画が始まった。
おそらく影をなぞった人は、もう1人の自分の姿をおもしろいと思ったのでしょう。
皆さんも、子供の頃、道路に照らされた自分の姿を追いかけた経験はないでしょうか。
自分の影をなぞって線を引いた人は、あたかも自分の分身を記録するかのように、存在の証として残そうとしたのではないでしょうか。
つまり、たとえ1本の線でかたどっただけの人物スケッチでも、そこには何らかの意味が込められている可能性があるということです。
彼らはなぜ洞窟の奥深くで絵を描いたのか?
約1万8千年前に描かれたと推定されているラスコー洞窟の壁画は、世界最古の絵として知られています。
他にも、人類は各地で洞窟の中で絵を描いてきました。
人や動物など、絶滅種も含まれていますが、現代人が見てもわかる姿で描かれています。
興味深いことに、洞窟で描かれている絵の多くは、入口から遠い真っ暗闇の奥まったところで見つかっています。
入口の方が光があるので描きやすいはずです。なぜ彼らはわざわざ洞窟の奥で描いたのでしょうか?
イスラエルのテルアビブ大学の研究チームが発表した論文では、洞窟の深奥では酸素が不足し、低酸素症になるところに着目しています。
低酸素症は、息切れや錯乱などの状態を引き起こし、いわば幻覚を見るような変性意識になります。
幻覚を見る状態で絵を描くことで、彼らは洞窟の奥深くで万物とつながろうとしていたのではないかと推測しています。
出典:THE TIMES
https://www.thetimes.co.uk/article/oxygen-starved-cavemen-created-high-art-26ljtr8n6
単なる狩りの成功を祈ってという理由ではなく、もっと深淵な儀式的な意味合いで絵を描いていたのかもしれません。
日本人が発見したナスカの地上絵
山形大学の研究所が、ナスカの地上絵を新たに168点発見したことがニュースになりました。山形大学にはナスカ研究所があり、ペルー文化省から許可を得て「地上絵」を研究する世界唯一の組織だとテレビでも紹介されていましたが、失礼ながら日本の山形にそんな組織があるとは驚きでした。
ぞくぞくと発見が進んだのは、AIが時間短縮に貢献してくれたからだといいます。
ナスカの地上絵と聞くと、上の写真のような大きな鳥の絵を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。今回発見した地上絵には、人の首やネコ科の動物、ヘビなどが含まれていました。
鳥以外で中でも有名なのは、クモの形をした地上絵です。
クモは雨を象徴し、乾燥地帯のナスカでは、雨乞いのために描いていたのではないかとも想像されています。
このような広大な地上絵を見ると、「古代人がこんな絵を描けたはずはない、きっと宇宙人の仕業だ!」という意見も出るほどです。
しかし、発掘作業を進める中で多数の土器が見つかっており、その土器にも地上絵で描かれている動物がそっくりに描かれているため、やはりその当時の人たちが地上絵を描いたのではないかと考えられています。
そして、考古学者の見解によると、ナスカの地上絵は“壁のない神殿”だったのではないかと推測されています。
諸説ありますが、いずれにしろ何かしらの意図があって制作されたに違いありません。
暗号を込めたダ・ヴィンチ絵画
「理性ではなく、習慣と眼だけで絵を描く画家は、鏡のようなものだ。目の前のあらゆる事物の存在を、深く認識することもなく映し出すだけだからである」
出典:アトランティコ手稿 レオナルド・ダ・ヴィンチ
ただ見たものを見たままに描くのであれば、それは鏡に写したのと同じであるとダ・ヴィンチは主張しています。
以前、小説家のダン・ブラウンが描いた『ダ・ヴィンチ・コード』という作品が映画化され、世界的な話題となりました。ルネサンスの巨匠ダ・ヴィンチが描いた絵画には、人類の歴史を根底から揺るがすような暗号メッセージが込められているというものです。
『ダ・ヴィンチ・コード』はフィクションの小説のため、誇張して創作されており、史実とは異なるストーリーになっています。そのため批判も招いていますが、絵の中にどのような意味が込められているかを考えることは各自の自由です。
世界に存在しているものは、みんな何か意味があって存在している。そういう目線で眺めてみると、何か新しい発見ができそうな気がしてきます。
美術鑑賞をする機会がありましたら、漫然と眺めて終わるのではなく、ぜひ作者の意図に思いを馳せてみてください。
旧:WEBマガジン・作家たちの電脳書斎 デジタルデン 2023年 1月 公式掲載原稿
現:作家たちの電脳書斎デジタルデン 出版事業部 (https://digi-den.net/)